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リスキリングを導入・定着させるベストプラクティス

今注目のリスキリングを導入・定着させるベストプラクティス
Submitted by Sayoojya on

今、あらゆる業界で自動化技術や人工知能(AI)の導入が急速に進んでいます。働き手にとっても雇用主にとっても、リスキリングや学び直しはもはや避けては通れない課題なのではないでしょうか。

➥働き手にとっては…プロフェッショナルとして成長し、自分の市場価値を高め、キャリアを切り開く手段 

➥企業にとっては…今までのノウハウでは解決できない課題に取り組み、未来のビジネスを担う人材を確保する戦略

世界経済フォーラムによると、2025年までに半数以上の従業員にスキルアップの機会を提供する予定の企業は全体の73%に上ります。従業員が仕事を効果的に遂行するために必要なスキルの40%以上が今後数年間で変わると予測されていることもあり、多くの企業が研修努力を加速させています。

リスキリングの重要性はもはや言うまでもないでしょう。ですが「具体的にどうすればいいか?」がわからなくて困っている方は多いのではないでしょうか。

この記事では継続的にスキルアップに取り組むプロセスを確立し、社員が自ら学び続けられるようエンパワメントを計るための方法をご紹介します。

尚、リスキリングとは新しい業務を担当するために新たなスキルを習得すること(例えば、DXのため不要になったポジションから別のポジションに人材を再配置する場合など)、という定義が一般的ですが、ここではより広義に捉え、スキルアップ(今の仕事をこなすために必要となる新たなスキルを習得すること)も含めて議論します。

働き手も会社も得をする、リスキリングの相乗効果

リスキリングは会社にとっても働き手に取ってもメリットのあるものです。まずはその意義をおさらいしましょう。

キャリアの広がり(従業員)=人材の流動性の向上(会社):

リスキリングにより従業員はスキルセットを広げ、社内でキャリアを切り開いていくことができます。同時に、従業員のスキルセットが多様化することは会社にとっては業務の属人化を防ぎ、社内の人材の流動性を高めることにつながります。人が移動することにより刺激し合い、組織が活性化するでしょう。

市場価値の維持(従業員)=時代の変化に強い組織作り(会社):

また、リスキリングによって従業員は会社にとって必要な人材でい続けることができます。万が一転職を考えたときにも、市場価値のある人材として転職市場に出ることができるでしょう。企業はリスキリングを促すことで、社員の応用力や適応力を高め、時代の変化に負けないチームを作ることができるはずです。

新たなビジネス機会の開拓(従業員・会社):

リスキリングは新たなビジネスチャンスの獲得にもつながるでしょう。例えば新しいマーケティング・オートメーションツールが登場したとします。マーケティング・チームがこのツールを使いこなせるようになれば、これを活用して今までと違う市場を開拓できるかもしれません。このような挑戦は達成感やエンゲージメントに結びつくはずです。そして会社はこうした努力により新たな利益を得ることができます。

採用よりもリスキリングが効果的な理由

これまでは新たなスキルが必要になった場合は外部から人材を採用するのが普通でした。ですがより戦略的で持続可能なアプローチとして、既存の従業員のリスキリングに注目が集まっています。

リスキリングには新規採用と比べていくつかの明確な利点があります:

  • 費用対効果が優れている:新規採用者の採用には、求人広告掲載料、人材紹介料、移行期間中の生産性の低下といったオポチュニティコストがかかります。リスキリングに投資すればこのような費用を回避することができます。
  • 転職市場の人材獲得競争を回避できる:今必要とされているスキルには、サイバーセキュリティやAIなど登場してから日が浅いため、中途採用市場にも候補者がほとんどいないものが少なくありません。外部採用を行うにしても非常にハードルが高いのです。継続的にリスキリングを行うことで人材獲得競争に巻き込まれずにすみます。
  • 社員のエンゲージメントや定着率の向上:社員の成長に投資することは、「あなたたちが大切です」という何よりのメッセージです。これは会社への忠誠心と帰属意識を育み、エンゲージメントや定着率の向上につながります。習得したスキルを使って新しい業務に取り組むことができれば、モチベーションのアップも期待できるでしょう。
  • 学び続ける、挑戦しつづける文化の醸成:リスキリングを定着させることで、継続的な学習をするのが当然、という考えが浸透します。好奇心や新しいアイディアの探求、イノベーションを大切にし、変化に前向きな会社文化が育まれるでしょう。

リスキリング&継続的な学習を定着させるポイント

では、具体的にどのようにリスキリングを実践すればいいのでしょうか?リスキリングを定着させるためのポイントをまとめると次のようになると思います。

1. すべての基本はスキルギャップ分析:

スキルギャップ分析とは、現在の組織のスキルをマッピングし、不足しているスキルを特定することです。パフォーマンス・レビューやスキル・アセスメント、アンケートなどを利用して現状を把握しましょう。そして会社や部署の中長期的な戦略を実行するためにはどのようなスキルが足りないのか、強化すべきスキルは何かを検討します。このギャップ分析がリスキリングを実行するためのロードマップとなります。

2. カスタマイズしやすい、利用しやすい学習プログラムの工夫:

リスキリングを成功させるためには、一人ひとりの学習スタイルやキャリア志向に合わせて運用・活用できるような柔軟なプログラム作りが大切です。硬直的なアプローチはあまり効果的ではありません。オンラインコース、講師主導のワークショップ、ベテラン社員が知識を共有するメンターシッププログラムなどを組み合わせるとよいでしょう。

3. 隙間時間にちょっとずつできるマイクロラーニング:

リスキリングは大前提として仕事をしながら行うものです。何時間もかかるような研修を何度も受けなければいけないような制度は持続可能ではありません。特定のスキルや知識を提供する、短時間で集中的な学習モジュールを提供するマイクロラーニングの力を取り入れましょう。このような学習スタイル会は業務の合間にも取り組みやすく、知識の定着も期待できます。

4. 学習管理システム(LMS)の活用:

学習管理システム(Learning Management System;LMS) は学習リソースを管理したり、社員の学習状況を追跡したり、オンラインコースの配信ができるシステムです。リスキリングのハブとして活用できます。初期投資は必要ですが、社員が自由にアクセスできて、会社としても管理しやすいので効果的にリスキリングを進めるのに大変便利なツールです。

リスキリングを定着させるためのロードマップ

リスキリングの文化を確立したい場合、ロードマップがあると役に立ちます。スタート地点と目標、そこに到達するためのフレームワークを明示し、ニーズに合ったプログラムを構築するための土台となります。

1. 経営陣のバイインの確保

リスキリングの文化を根付かせるためには経営陣の賛同と積極的な支援が不可欠です。また、各部署のリーダーやマネージャーがリスキリングのメリットを理解し、自ら部下の手本となるように行動するようにしましょう。これにより継続的な学習に対する組織のコミットメントを示すことになります。

2. リスキリングの意義の周知

社員には会社がリスキリングを促進している意義、リスキリングのメリットを明確に伝えましょう。リスキリングが会社の目標達成にどうつながるのか、個人のキャリア開発にどうに役立つのか、など。このような説明が不足していると「またやることが増えた…」とネガティブに捉えられてしまい、せっかくの投資が無駄になってしまいます。「会社が何をしようとしているのか」を理解できれば、社員が積極的にプログラムに参加する動機付けとなるでしょう。

3. 予算・リソースの確保

リスキリング・プログラムを構築するには予算やリソースが必要です。前述の学習管理システム(LMS)のようなプラットフォームやコンテンツ、人員を用意するための予算を確保しましょう。

4. 多様な学び方ができるプログラムの構築

リスキリング・プログラムが全員のニーズに確実に応えるためには、さまざまな学習方法を提供することが重要です。人にはそれぞれ得意な学習スタイルがあります。選択肢を提供することで期待する学習効果を得やすくなるでしょう。例えば次のようなものが考えられます。

  • オンラインコース
  • 講師によるワークショップ
  • メンターシップ・プログラム
  • マイクロラーニング・モジュール
  • OJT

5. パフォーマンスマネジメントとの統合

パフォーマンスマネジメントの項目としてリスキリングを導入しましょう。社員の目標にあわせたモジュールや学習を促し、人事考課の際に進捗を確認していくのです。リスキリングをキャリアプランの一部として捉える習慣がつきます。

6. フィードバック・ループの確立

リスキリングは継続性が大切です。部下とマネージャー双方がフィードバックできる仕組みを確立し、どんどん改善していきましょう。進化し続けるスキルニーズに対応し、皆が使いたい、学びたいと思えるようなプログラムを育てましょう。

7. 成功例の共有、表彰 

人は周りに認められたいという承認欲求を持っています。リスキリングに少しでも成功したらチームミーティングや全社的なアナウンスなどでその努力を認めましょう。特定の学習モジュールを修了した場合に修了証を授与するのも有効です。

言葉だけではなく、目に見える形で成果を認めれば更に効果的です。リスキリングの結果、新しい仕事を任されたり、リーダーシップを発揮する機会があったり、キャリアパスが開けたり、といった事例を積み重ねていけばリスキリングは「ただの社員研修」ではないことが伝わるでしょう。新たな職責に応じて給与やボーナスがアップしたりすれば尚更学習意欲が高まるはずです。

継続的なモニタリング、改善

リスキリングは継続的なプロセスなので、効果を確実にするためにモニタリングや定期的な点検、軌道修正が欠かせません。

ビジネス環境はもちろん、チーム内のスキルギャップも変化しています。目指すゴールと現状を定期的に見直さなければ、プログラムはあっという間に時代遅れになってしまうでしょう。点検を行うことでプログラムをフレッシュに保つことができます。

また、チェックを行うことによってプログラムやコンテンツの有効性を評価するという意味もあります。必要な知識やスキルの習得に役立っているか?学習した内容は身になっているか?学んだスキルは社内のパフォーマンス改善やイノベーションに結びついているか?といったことを確認し、改善を進めていくことで、プログラムのROIを確保することができるのです。

以上がMorgan McKinleyが考える、リスキリングを導入・定着させるベストプラクティスです。是非実践してみてください。