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チェンジマネジメント論:「変わる力」を育てるコツとは ~チェンジマネージャー5人に聞きました~

チェンジマネジメント論:「変わる力」を育てるコツとは ~チェンジマネージャー5人に聞きました~
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新型コロナウイルスの影響がどんどん広がる一方で、パンデミック終息に向けた光明は未だ見えません。この混沌とした状況において今まで以上に「変革」を意識している企業は多いのではないでしょうか。予算が削られ、採用が凍結し、経費が厳しくチェックされる中で、変革に伴う痛みを実感されている方も多いと思います。

新型コロナウイルスの影響がどんどん広がる一方で、パンデミック終息に向けた光明は未だ見えません。この混沌とした状況において今まで以上に「変革」を意識している企業は多いのではないでしょうか。予算が削られ、採用が凍結し、経費が厳しくチェックされる中で、変革に伴う痛みを実感されている方も多いと思います。

組織はどうすれば変われるのでしょうか?最近チェンジ・ケイパビリティ(change capability)という言葉を頻繁に耳にするようになりました。直訳すれば「変わる力」「自ら変われる能力」といったような意味ですが、実は変わる力を伸ばすための方法論があるのです。

この文脈でのチェンジ・ケイパビリティとは様々なツールやテンプレート、体系的な手法や枠組みを活用して、社員に変革を促す能力のことを言います。

例えば外資系の金融機関などは一般的に「チェンジ・マチュリティ」が高い、すなわち組織変革の成熟度が高いとされています。高度なツールやテンプレート・ライブラリを構築し、部署を超えて機能するフレームワークや一元的に管理できる体制を整えているからです。

但しこうした企業でも、チェンジ・マチュリティが全部署に一様に浸透しているわけではなく、これまでプロジェクトや変革に取り組んだ経験がないために、取り残されている部署もあります。

今「チェンジ・ケイパビリティ」が注目を集めている理由とは

それは、あらゆる業界で「変革」や「トランスフォメーション」の重要性が高まっているからです。これまで私たちが大きな変革を成し遂げてこなかったという意味ではなく、今が恒常的な変化の時代なのだという方が的を得ているでしょう。例えば:

  • 新技術が次々と生まれている
  • M&Aが日常化している
  • 「アジャイル」はもはや目新しいものではなく、標準的なデリバリ手法の一部として定着している(適切な分野で、と願いたい)
  • リスク、修復、新規制導入は今後も続く
  • 自動化、AI、データアナリティクスが実用化され、オペレーションや人員配置に影響を与えつつある

このように規模や扱う製品、業界に関わらず全ての企業が変化に直面しており、どうすれば社員の抵抗を最小限に抑え、皆が納得できる形で変われるか?という問いがユニバーサルなものになってきているのです。

では、プロのチェンジマネージャーは実際どのように「変わる力」を育てているのでしょうか?


変革を成功させるためには?
~チェンジマネージャー5人に聞きました~

Morgan McKinleyではチェンジマネジメントの専門家5人にインタビューをし、社内のチェンジ・ケイパビリティ(変わる力)を強化するためのポイントを5つずつ教えていただきました。

それぞれ異なる経歴を持つ5人ですが、「変わる」DNAを企業に取り込んできたベテランです。


独占インタビュー:「変わる力」を育てる5つのコツとは?

Steve Milnes氏(QBE保険チェンジマネジメント部長

チェンジマネジメント論:「変わる力」を育てるコツとは ~チェンジマネージャー5人に聞きました~

金融業界に25年、豪テレコム大手Optusに4年務めた後、オーストラリアで業界2位の保険会社QBEに入社しました。現在チェンジマネジメント部長として、人にフォーカスしたチームを率いてQBEの社員とお客様のためにがんばっています。私はこれまでのキャリアにおいて金融・通信業界で様々な職務に就いてきました。営業、プロセス改善、プロダクトデザイン、プロダクトマネジメント、それからプロジェクトマネージャー・ビジネスアナリスト・チェンジマネージャーとしてプロジェクトのデリバリにも携わりました。この中で唯一の共通項が「人」です。私は自分のチームを始め、仕事で関わるチームの発展と成長を大切にするピープル型リーダーです。個々の社員だけでなく、最終的には客様が優れた成果を得られるように、シニアリーダーとしての影響力を利用して「一貫性のあるリーダーシップ」を推進しています。

 
1.チェンジマネジメントは戦略的に
「人」という要素を十分に吟味せずに事業戦略を練ろうとする企業が多いように思います。人を念頭においてアクションや目標を具体的に書き込まないと、戦略の成功をコストカットやテクノロジーの導入といった観点からしか図れなくなってしまうかもしれません。
 
2.経営陣を巻き込むこと
変革に勢いをつけ社員のサポートを得るためには、チェンジマネジメントや変革期のリーダーシップのあり方などについて経営陣に教育を施すべきです。どんな変革を目指すのかという統一した見解を築くことで、ときに相反する優先課題を抱えている社員に変革プロジェクトの意義を印象付けることができます。デリバリばかりに気を取られて持続可能性を蔑ろにするリーダーは、この点を忘れてしまいがちです。
 
3.変革を成し遂げるための手法や枠組みを明確に設定する
メソッドとは、ツールやテンプレートを使って経験豊富なチェンジマネジメントスタッフの成果を管理するためのものと考えている方も多いかもしれませんが、違います。メソッドとは以下のような目的で用いるものです:

  • 「わが社はこうやって変わる」というデリバリの道筋をPMOや会社全体に対して示し、教育する
  • チェンジマネジメント計画を社内の他のフレームワーク(ウォーターフォール/アジャイルなどのプロジェクトマネジメント、ビジネス分析、テスティングなど)と統合する
  • 新任のチェンジマネージャーが早く会社のやり方に馴染めるようにすることで、変革の成功率を改善する

4.プロジェクトに関係のない部署や業務とも積極的に関わりを持つこと
チェンジマネージャーはプロジェクトに直接関わらない人にも「変革」のノウハウを広めなければいけません。管理職はもちろん、個別の社員にも変革に対する心構えを伝えます。彼らと向き合う時間をたっぷりとりましょう。コーチングやメンター役など、変革の実現につながることなら何でも積極的に引き受けるべきです。
 
5.新しいやり方を積極的に取り入れること:チェンジマネジメントの世界も日々進化しています。教育や変革支援に役立つテクノロジーを積極的に取り入れましょう。人はどうやって学ぶのか、学んだ知識をどうやって応用するのか、自ら勉強を怠らず、チェンジマネジメント計画や効果測定に生かしましょう。


Natalie de Carvalho氏

チェンジマネジメント論:「変わる力」を育てるコツとは ~チェンジマネージャー5人に聞きました~

15年間、複数の業界でチェンジマネジメントの手法や成果、キャパシティの拡充に携わってきました。現在はその経験と知見を生かしFirst State Superというオーストラリアの年金基金で Business Readiness and Assurance部門の立ち上げに参画しています。この部署はメンバーに永続的な価値をもたらすような形で安全に変革が成し遂げられるようにするのがミッションです。今特に力を入れているのがビジネステスティング能力の向上と、一貫性のあるメリットの創出法や引継ぎの仕方に関するガイダンスです。その大元には構造と柔軟性、どちらも重要だという認識があります。二つをどうミックスするのが最もよいかという問題は、どのような組織にとっても重要なものです。

1. 人脈を使って人に話を聞く
チェンジマネジメントに成功していると評判の企業を探し、その経営者にアプローチして「何を」「なぜ」「どのように」変えようとしているのか直接聞いてみましょう。
 
2. 具体性を追求
なぜ会社にとって今チェンジマネジメントが優先すべき課題なのか?会社として成し遂げたいアウトカムは何か?今解決したい課題や、掴みたいオポチュニティは何か?どの程度のチェンジマネジメント成熟度をいつまでに達成したいのか(Prosci Change Maturity Model参照)、経営陣と目標を定めるのもいいと思います。
 
3.「後見人」を探す
経営陣の中に最低一人、チェンジマネジメントの意義を明確に説明でき、変革を強力にプッシュしてくれる人を探します。
 
4.  改革をスタート
重要な改革のプランニング、デリバリ、内在化をサポートしてくれるチェンジマネジメント人材を迎えます。変革の成果を測定・共有し、「変わる」ことのバリューを示します。Positivity Strategistを自任するRobyn Stratton-Berkessel 氏が言うように、「小さな勝利があれば、皆の現状についての思い込みを変えることができる」のです。
 
5. 焦らず、粘り強く
アプローチを全社レベルで変革するには時間がかかります。小さな目標でも達成できたことは喜び合いましょう。変革がどう進んでいるかを観察し、軌道修正をし、新しい期待値を設定し、(成果を)測定しながら前に進みましょう。


Liz Short氏

チェンジマネジメント論:「変わる力」を育てるコツとは ~チェンジマネージャー5人に聞きました~
1.  期待値はとにかく明確に
チェンジマネジメントや、チェンジマネージャーの価値提起に対する期待値をはっきりさせることが大切です。
 
2.  全社的に統合されたモデルを作成する
 
3.  会社のチェンジマチュリティを理解する
チェンジマチュリティ(変革に対する成熟度)を理解し、最もふさわしいプラクティスを普及させるために現状を大きく変える覚悟をしましょう。
 
4.  最適な部署や組織を特定
チェンジマネジメントを担うのに最も相応しい部署やレポーティングラインを見極めること。主要パターンは次の通りです:①集権型(Centralized Centre of Excellence、PMOなどの中核組織が変化を主導);②分散型モデル(各事業部にチェンジマネージャーをおく);③折衷型
 
5.  経験豊富なチェンジマネジメント人材を採用
「変わる力」を根付かせるために専門人材を採用しましょう。その知見に見合った待遇を用意することも忘れずに。


Michelle Cock氏

チェンジマネジメント論:「変わる力」を育てるコツとは ~チェンジマネージャー5人に聞きました~

私は金融業界で20年以上の経験を持つ戦略的変革と人事エグゼクティブです。現在はオーストラリアに本社を置く不動産・建設会社、Lendlease のグローバルファイナンス部門に在籍し、Business Improvement & Business Services本部長の下で仕事をしています。専門はグローバルプログラムにおける戦略的変革の設計・導入、プロジェクトマネジメント・プログラムマネジメント、Cレベル幹部のステークホルダーマネジメント、戦略的人員計画、組織設計・移行、エグゼクティブ採用、タレントマネジメント、ソートリーダーシップ(Thought Leadership)など。組織変革に関する社内教育や、ビジネス主導の変革を成功につなげることに情熱を注いでいます。
 
 
1.  時間をかけて顧客の課題を理解する
潜在的な顧客が抱えている課題や、彼らが変化をどう捉えているか、これまで成功を収めてきた点、変化をどう理解しなぜそれが難しいと考えているかといったテーマとじっくり向き合うことが大切です。顧客インサイト・セッションを実施し、双方向的なコミュニケーションを心掛けるのも有効です。
 
2.  会社のニーズを考えること
Procsiなどのフレームワークをすぐさま導入するのではなく、会社が何を必要としているか、どうすれば「変化」というコンセプトがわかりやすく伝わるかを考えること。ツールはシンプル・イズ・ベストです。
 
3.  時間をかけて丁寧にSWOT分析を行う
全社的なSWOT分析を行い、誰が変化に前向きなのか、抵抗勢力はどこか、無関心なのは誰かを特定しましょう。
 
4.  チェンジ戦略やコストモデルの設計・ソーシャル化に注力
組織へのサポート、ガイダンス、付加価値を特に大切に。
 
5.  チェンジマネジメントチームのカルチャーを明確に
チェンジマネジメントチームを立ち上げ、メンバーを採用する際にはチームの「チェンジカルチャー」を明確にしましょう。経験、業界知識、態度・行動、価値観はもちろん、こうしたものが会社にマッチしていることは非常に大切です。
 
 
Adam Ryder氏

 チェンジマネジメント論:「変わる力」を育てるコツとは ~チェンジマネージャー5人に聞きました~

私はチェンジマネジメントの専門家で、常に高いモチベーションを保ちつつ成果を追求しています。ビジネス効率の改善や従業員エンゲージメントの強化、ビジネスバリューの提供を目指す大規模トランスフォメーションプロジェクトの設計・デリバリに、経営者のパートナーとして参画してきました。
 
1.  なぜ変化が必要なのか、きっちり論証する
当たり前ですが、なぜ今までと違うやり方をしないとダメだという明確な理由がなければ、(改革に)必要な後押しを得るのは大変です。私の場合、チェンジマネジメントの成熟を加速させなければいけないというニーズを、新たに発表された経営戦略に絡めることができました。チェンジマネジメントの成熟度やケイパビリティを改善せずに戦略を推し進めるのは危い、というリスクを強調したのです。
 
2.  過去の取り組みを否定しない
大掛かりな変化の提案は慎重に行います。過去の成功体験に敬意を表しつつ、なぜ今後は同じやり方が通用しないのかを客観的に示すのです。これは上記1とも重なるポイントです。私の場合、過去の取り組みを全否定するのではなく、前のやり方は「当時の目的には」適っていたが、経営戦略やプロジェクトの規模・複雑さ、当局の目が変化し、また持続可能な変革を取り入れる必要性が生じた結果、会社のニーズが変わったのだと説明しました。 
 
3.  キーパーソンを特定する
変革を実際に進めるためには、キーパーソンを自分の味方につけなければいけません。改革を後押ししてくれる人は誰か、水を差しそうな人は誰かを見極めましょう。事前に計画を立てて、関係者のエンゲージメントを得るための時間をしっかり確保し、適切なタイミング・適切なやり方でアプローチします。個人的には、最低でも経営陣やシニアエグゼクティブ2~3人のバイインを得られるようにしています。私のチェンジマネジメントビジョンに賛同してくれる幹部がいれば、経営会議などで私が示す方向性を支持してもらえます。誰が反対しているかを把握しておくことも大切です。ただし、反対派の説得に全ての労力を吸い取られないようにしています。バランスが肝心です。
 
4.  少しずつ前進していることを示す
進捗を共有することを大切にしています。私のビジョンの実現には数年かかるかもしれないとしても、(変革がもたらす)価値はもっと早い段階で示さなければいけません。私が採用している四本柱の戦略では、進めている作業をそれぞれの柱に関連付けられます。短期間で期待できる成果を特定すると同時に、もっと時間がかかるアクション(行動の変革や、働き方の大胆なシフトなど)もあることを周りにしっかり伝えます。
 
5. 「受益者負担」のモデルの構築
プロジェクトの初期段階で、その会社でうまく機能するオペレーティングモデルを設計するための時間をきっちりとるべきです。サポートを必要としているのは誰か、そのサポートを提供する最善のやり方は何か、誰がお金を出すのか、などについて考えます。私はチェンジマネジメント活動の全資金を、支援するビジネスプロジェクトから得ています。これにより持続性も確保できますし、商業的にも理に適っています。一つ注意すべきは、費用を負担しなければならないとなると、チェンジマネジメントは要らないと結論付けてしまう人やプロジェクトもあるかもしれないことです。そうならないためにも、いつでもバリューを示すことが大切なのです!
 


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