定着率を上げるオンボーディングの進め方(チェックリストつき)
サーチから面接、オファーマネジメントを経て理想の候補者が内定を受諾してくれたとします。人事としては一件落着と幕を引きたいところですが、採用の仕事はここで終わりではありません。エース人材がどれだけ早く組織に馴染み、実力を発揮できるかはオンボーディングにかかっているからです。
オンボーディングは従業員エクスペリエンスの入口です。転職面接を行っている間は候補者は部外者ですが、一旦オファーを受諾すればそこからは「社員」として扱うことになります。
社員にどんな風に接している会社なのか?やっぱりこの会社にしてよかった、頑張ろう、と思ってもらえるような体験にしなければ後々のリテンションに響きます。オンボーディングで手を抜くと、これまでの苦労が水の泡になりかねないのです。
そこで今回のブログでは、新入社員をがっかりさせない、従業員オンボーディングの最新のプラクティスをご紹介します。
- 従業員オンボーディングとは
- オンボーディングプロセスの構築
- 転職初日のエクスペリエンスで目指すべきもの
- 良質なオンボーディングの意義
- 在宅勤務の場合のオンボーディング
- オンボーディング終了後
- オンボーディング・チェックリスト
1. 従業員オンボーディングとは?
従業員オンボーディングには会社のカルチャーや価値観の紹介といったソフト面から生産的に仕事を進めるためのツールや情報の提供といったハード面まで、様々な要素があります。仕事の基礎となる人間関係を築き、会社が自分に何を期待しているのかを明確に理解してもらうためのプロセスでもあります。
「社員が入社してからオンボーディングの心配をするようでは全く手遅れだ」
BambooHR社CEO・Ben Peterson
オンボーディングというと新入社員向けのオリエンテーションプログラムを思い浮かべる方も多いと思いますが、それはオンボーディングの一部でしかありません。オンボーディングは一過性ではなく、時間かけて熟成させるものとして捉えるべきです。入社して最初の1、2週間が大切なのは言うまでもありませんが、オンボーディングは会社に入って最初の一年は続けるべき(※リンク先英文のみ)、とする専門家もいるほどです。
質の高いオンボーディングには周到な準備が欠かせません。オファーを受諾した候補者は、少なくとも転職活動中は会社に対して良いイメージを抱いていたはずです。採用エクスペリエンスと同じくらい、できればそれ以上のオンボーディング体験を用意したいところです。
2. オンボーディングプロセスの構築
全米で働く人を対象にしたギャラップ社の調査(リンク先英文のみ)では、勤務先の従業員オンボーディングが素晴らしいと感じている人はわずか12%でした。しかし離職率や従業員の生産性への影響を考えれば、形だけ取り繕っても駄目でしょう。オンボーディングは「わが社らしいエクスペリエンスとは何か」という問題と切っても切り離せないからです。
例えば:
- プロセスはいつから始めるか?
- 期間はどのくらいにするか?
- 転職初日に勤務を終えて帰宅する時に、会社についてどんな印象を持っていてほしいか?
- 会社のカルチャーや職場環境について知っておいてほしいことは何か?
- オンボーディングに協力してもらうキーパーソン(既存の社員)は誰か?
- 達成してほしいゴールはあるか?
- オンボーディングプログラムの成功をどのように図るか?
オンボーディングプロセスを構築するにあたり人事はもちろん、経営陣や現場のマネージャーの間でこうした問いについて明確な合意を形成しておかなければいけません。経営理念や会社の今後の在り方にも関わる問題ですので、丁寧に議論を重ねるべきです。
方向性が決まったら、以下のような段取りを整えます:
- 必要書類は全て署名・捺印してもらい、出社日までに回収
- 福利厚生プログラムの選択オプションなどがあれば事前に送付
- 会社のウェブポータルなどへのアクセスのセットアップ
- 出社日のオフィス案内役の手配(エントランスや受付での出迎え含む)
- 直属の上司と挨拶をする時間の調整(難しい場合はビデオ会議や録画したメッセージなど、柔軟に対応を。録画の場合は使いまわさず、その人のためのメッセージがよいでしょう)
- 電話機やパソコンなどのセットアップ(リモートの場合は余裕をもって宅配便で送付)
- 会社全体、及び担当業務についての研修の準備・手配
- 同時期に入社する人がいれば、「同期」のコミュニティをつくる(リモートならオンラインでも)
- メンターの任命
- 定期的なキャッチアップ・セッションの調整(最初の数か月分を予めスケジューリングしておくのがおすすめです)
- オンボーディングプログラムの改善に役立てるため、新入社員からのフィードバックを得ること
3. 転職初日のエクスペリエンスで目指すべきもの
記念すべき転職の第一日目は、会社側の期待値や目標や職場のルールを説明するのに最適なタイミングです。しかしそれ以上に大切なことがあります。それは「おもしろい」「ワクワクする」「明日も出社したい」と思ってもらうことです!
気の利いた文房具やマグカップなどのウェルカム・パッケージ(※リンク先英文のみ)を用意してみてはいかがですか?デスクの上にそっと置いておくのもいいですし、リモートなら入社日の到着指定で宅配すればいいでしょう。お金をかける必要はありませんが、「わが社へようこそ」という気持ちを伝えるのには十分です。会社のロゴ入りのグッズやノベルティなら、ファミリーの一員になったと感じてもらえるはずです。
また、他の社員と話すきっかけを積極的に作ってあげましょう。新しい職場に新しい仕事、新しい人間関係…転職初日は誰でも緊張するものです。周りから誘いかけて、できるだけ疎外感を感じさせない工夫が必要です。初日のランチに一人で行かせるのはもってのほか。仕事が終わった後のウェルカム・ドリンクはチーム全体と交流できるというメリットもあります。メンター制度があるなら初日にメンターと引き合わせるのも効果的でしょう。
転職一日目が終わるころには、自分の仕事の概要やチームメイトが何をしているかなどを把握しているのが理想です。そうすれば既存のメンバーが自分の仕事や立場が脅かされていると感じることもありません。
そして入社日にきちんと紹介しておきたいのが会社のカルチャーです。会社としてどんな行動や考え方を期待するのかをきちんと説明し、会社の価値観にあった仕事の進め方や意思決定ができるようサポートしましょう。
“新入社員に何をすべきかを説明し、そのために必要なツールを提供しなければ、その社員が失敗するのは会社の責任です”
4. 良質なオンボーディングの意義
オンボーディングは非常に大切なプロセスですが、まだその重要性が社内で十分に認知されていない場合もあるのではないでしょうか。上司や経営陣がオンボーディングエクスペリエンスの意義を理解してくれないという方は、是非以下をヒントに社内啓蒙を図ってみて下さい。
- 良質なオンボーディングを受けた社員は、そうでない社員と比べてリテンション率が82%向上することがわかっています(リンク先英文のみ)。効果的なオンボーディングでは社員が「自分は大切にされている」と感じエンゲージメントが高まるからです。社員の定着率が上がれば当然、中途採用コストも節減できます。
- 生産性を最大70%向上させ、仕事に対する満足度も大幅に改善できます
- オンボーディング・エクスペリエンスが貧弱だと、迎えた社員が再び転職活動をする確率が2倍になるそうです
- 会社にうまく馴染めた社員は勤め先を知人に紹介する可能性が高まり、リファーラル採用が期待できます
- 他部署とのコミュニケーションを促進すれば、社内の連携が強まります
- 迎えた社員を定着させ中長期的にきちんと育てることで、後継育成にもつながります
5. リモート勤務の場合のオンボーディング
コロナ禍でリモートワークは確実に普及しており、新たに迎える社員が在宅勤務を希望する場合もあるでしょう。完全在宅勤務を認めれば、地理的に離れた場所からでも有能な人物を採用できるというメリットがあります。多様な人材が活躍する職場は生産性や創造性の向上も期待できます。
こうした流れを受けて、ウェブ面接などを活用して完全リモートの採用活動を行う企業が増えています。同時にオンボーディングもオンライン化したり、規模(人数)を縮小して行うケースも増加中です(パーソル社調べ)。
しかし在宅勤務の社員が会社やチームに馴染めているかをどうやって判断すればいいのでしょうか?鍵はやはりテクノロジーの活用です。Morgan McKinleyが作成した動画がありますので、是非ご参照ください(英語のみ)。思ったより簡単そうだと感じていただけたら幸いです。
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リモートでのオンボーディングのポイントをまとめておきます:
- ソフトウェア、ハードウェアをきちんとセットアップすること
- コミュニケーションツールを早く使いこなせるようサポートすること
- アドミや事務手続きをできるだけ簡素にすること
- 仕事でやりとりをする全ての人とのビデオ会議を設定すること
- 評価基準や測定方法を明確に説明すること
- ビデオ会議や電話で何でも相談できるメンターを任命すること
こちらの記事も是非合わせてご参照ください:遠隔でオンボーディングを成功させる8つのコツ(日本語)
6. オンボーディング終了後
オンボーディング期間は企業によってまちまちです。3か月、半年、長いところでは1年間という会社もありますが、いずれはプロセスが完了します。その時点でかつての「新人」は会社/チームの一員としての自覚を持ち、仕事を生産的に進め、同僚からも他部署の人からも大事なメンバーとして受け入れられているはずです。
会社として次に考えるべきは、エンゲージメントを維持したまま中長期的に活躍してもらうためにはどうすればよいかということです。オンボーディングを終了したら人事としての関わりが切れるわけではなく、次は人事ビジネスパートナー(HRBP)や人材育成の担当者が中心となって今後のキャリアプランを考えてあげるべきでしょう。キャリアパスや目標を明確にすることでモチベーションを保ちやすくなり、リテンション率が高まります。ここでバトンを落とさないことが大切なのです。
7. オンボーディング・チェックリスト
Morgan McKinleyでは無料でオンボーディングのチェックリストをご提供しています。是非ご活用ください。
ダウンロードはこちらから。