中途採用のオファー受諾率を上げるポイントとは?
ソーシングをし、ショートリストを作成し、有望な人材と面接を重ね、ようやく「この人だ!」という候補者を見つけたら… いよいよオファーですね。
オファーステージではスピードが命です。採用したい人材とコンタクトを絶やすことなく、速やかにオファーレターを用意し、リファレンスチェックを進めつつ、カウンターオファーの気配を察知したらその対処法も決めなくてはいけません。やることは実にたくさんあり、一瞬たりとも気を抜けません。
どんなに素晴らしい逸材を見つけても最後の最後で逃してしまってはそれまでの努力が水の泡です。しかし転職エージェントとして見ているとここで手を抜いてしまう、或いは詰めが甘い「もったいない」企業が実に多いように思います。
英語には “Candidate ghosting” という表現があります。候補者が突然、煙のように消えてしまい、電話をしてもメールをしても連絡がつかない、LinkedInでもつながりが削除されている…というような状態を言うのですが、身に覚えのある採用ご担当者の方も多いのではないでしょうか?
候補者の「ゴースト」化を防ぎ、オファーにサインしてもらうには採用企業としてどうすればよいのでしょうか。
候補者に「ゴースト」化されたことがある採用企業の割合=83%
以下、オファーの各段階を順を追ってご説明し、理想の候補者を逃さないために一つ一つのステージでやるべきこと、注意すべきことなどを解説します。
- 採用の意思決定はスピーディーに
- まずは電話で状況を確認
- 正式なオファーレターでフォローアップ
- カウンターオファー対策
- バックグラウンドチェック
- お断りの連絡も丁重に
- オファーの回答はいつまで待つべき?
1. 採用の意思決定はスピーディーに
企業が優秀な候補者を採り逃がす最大の敗因は、採用プロセスの遅さです。
大手調査会社ガートナーによると、現場マネージャーの採用判断が早い企業はそうでない企業と比べて優秀な人材を確保できる確率が10%高く、ターンアラウンド・タイムも短いそうです。この人を採用しようかどうしようかなどと迷っていると、より意思決定が早い競合に優秀な人材を奪われてしまいます。
採用したいと考えている人材には最終面接後速やかにコンタクトしましょう(目安は面接後1~2日以内)。こちらの前向きな気持ちが伝わるだけでなく、候補者が悶々と結果を待つストレス(またその間に気持ちがネガティブになってしまうリスク)を軽減できます。
回答はいつまでに欲しいのかというタイムフレームを示しても構いません。1週間くらいが普通です。それより早く返事が欲しいと思っても、余程の事情や理由がない限りは強引に急かしてはいけません。候補者にとっては人生がかかった重大な決断だからです。
「採用企業がやってしまうミスとして最も致命的なのは、オファーしたいと考えている候補者に採用の意思をはっきりと伝えないことです。曖昧な形で面接を終了すると、候補者はいつフィードバックがもらえるのか、どのくらい見込みがあるのかが全くわからず、不安になって他の仕事を探し始めてしまいます。こうした事態に陥らないためには、面接の最後に必ずいつまでにフィードバックを伝えるのかをはっきり伝えることが大切です」
(Morgan McKinley・人事部採用担当者Chloe Spillane)
2. まずは電話で状況を確認
オファーレターを作成する前に、候補者の最新の状況を電話で確認しましょう。人材紹介会社を通して面接している人材なら、エージェントにコンタクトをとってもらいます。他社のオファーを受けていないか、(何らかの理由で)辞退することはあり得るか、といったことを聞くためです。
オファー前に候補者の気持ちを確認する最後のチャンスですし、提示する予定のオファー内容を説明して何か懸念材料はないか、もっと交渉が必要な部分がないかを見定めることができます。反応によっては社内で更なる議論や調整が必要になるかもしれませんので、早期にリスクを把握し、迅速に対応することが大切です。一度レターを作成してしまうと、相手の出方を見てやり直すのは非常に難しい上、時間も大きくロスします。
給与や報酬、福利厚生もこのときに明確に提示するのがよいでしょう(ちなみに、ここで候補者が初耳、ということではいけません。面接の段階である程度説明しておくべきです)。候補者が会社の報酬体系や手取りをしっかり理解できるようにするだけでなく、候補者の期待値をマネージする上で非常に重要なやり取りになります。転職市場の相場がわからない場合は、業界や職種の給与ガイドなどを参照するとよいでしょう。
電話にはメールよりも熱意や感情を表現しやすいという利点もあります。オファーの提示は双方にとって非常にエキサイティングな経験です。その「体験」を印象的なものにすることができれば、候補者の心象はぐっと良くなるのではないでしょうか。従業員エクスペリエンスは、雇用契約を締結する前から始まっているのです!
3. 正式なオファーレターでフォローアップ
電話でオファーを伝え、口頭で受諾の返事をもらったら、いよいよ正式なオファーレターを作成します。
オファーレターは内定通知書、雇用契約書などとも呼ばれ、必ず作成しなければいけないものではありません(その点、法律で作成が義務付けられている労働条件通知書とは異なります)。「こういう条件でやりましょう」というお互いの約束のようなものです。しかし合意を書面にして残しておくことによって後のトラブルを防ぐことができますし、署名という行為による心理的なクロージング効果も期待できます。
レターには次のような内容を記載するのが一般的です:
- 候補者の氏名(ミドルネームなども忘れずに)
- 正式なジョブタイトル
- 雇用の開始日(有期雇用なら終了日も)
- 試用期間
- オファーの前提条件(あれば)
- 入社前に候補者に求めるアクション(あれば)
候補者にオファーレターの内容を全て確認してもらい、異存がなければレターにサインをしてもらいます。署名入りの原本を会社が、候補者はコピーをそれぞれ保管します(二部作成してお互い一部ずつ保管するやり方もあります)。
オファーレターは拘束力のある契約ではなく、会社側・候補者側いずれも辞退できるということも合わせて覚えておきたいところです。但し、一旦署名したレターを反故にするのは相手の信頼を裏切る行為であることに変わりはありません。特に会社側がオファーを取り下げると、タイミングによっては候補者の人生を大きく狂わせてしまうため、相当な事由がなければいけません。
4. カウンターオファー対策
さて、転職をするということは前の会社を辞するということでもあります。しかし優秀な人材が退職を願い出ると、その上司がカウンターオファーを提示して引き留めにかかることは珍しくありません。
誰かが辞めると会社は大きなダメージを受けます。後任を探すための時間・コストはもちろん、残されたチームメンバーの負担や部署に広がる不安・不満や動揺も組織にとってはマイナス要因です。ですから給与アップや昇進・昇級、希望していた部署への異動などあらゆる手を尽くして辞める社員を慰留しようとします。これが転職先のオファーに対抗するための「カウンターオファー」と呼ばれるものです。
カウンターオファーは処遇など目に見える雇用条件に限りません。感情に訴えて引き止めるやり方もあります。「君がいないと困るんだ」「ちょうど君を次期マネージャーに推薦したところだったんだ。まだ公にできる段階じゃなかったんだけれど」というのもそうですし、「退職願を正式に受理する前に、社長の話だけ聞いてほしい」というケースもあります。
意中の候補者がカウンターオファーを提示されている気配を察知しても、熱くなってはいけません。冷静に対応しましょう。以下のような点を指摘するのが効果的です。
- 今の上司に隠れて転職活動をした事実は変わらない。本当にそれをお互い「なかったこと」にできるだろうか?信頼関係はそう簡単に修復できるだろうか?
- カウンターオファーを受けた場合、今後の人事考課やサラリーレビューでの立場が弱くなり、今昇給した分ボーナスを減額される可能性もある。短期的には年収が増えたように見えても、長期的に不利にならないだろうか?
- そもそも今の会社で努力しても応えてくれなかったから、転職活動を始めたのではなかったか?少し給与を上積みしただけで転職の引き金となった問題は解決するのか?
- カウンターオファーを受けた人の8割は、結局6か月~1年後には退社している(解雇含む)という統計があるのを知っているか?
ご参考まで、以下はカウンターオファーを受けるのがなぜ得策ではないかを、候補者の立場にたって説明した動画です。
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オファーレターには法的拘束力はありません。候補者がオファーレターにサインしたからといって、気を抜かないようにしましょう。
5. バックグラウンドチェック
カウンターオファーを無事やり過ごしたら、オファープロセスもあと少しです。業界や業種によっては新たに社員として迎える人物のバックグラウンドチェックが必要になる場合があります。
- リファレンスチェックー経歴の詐称などがないか、候補者の過去の働きぶりを知る人物に勤務態度や人物像などについて問い合わせます。候補者を通して事前に相手の了承を得る必要があるので、早めに依頼しましょう。
※人種・宗教・門地・出生地など社会的な差別の原因となるような事柄や労働組合の加入状況などを聞くのは違法ですので注意してください。 - 就労許可・ビザなど―配属予定地での就労資格があるかをチェックするのは雇用主の仕事です。もしも資格がなかった場合には、会社に罰金が課される可能性があります。
このような入社前のチェックは必須ではありません。必要と判断した場合にのみ、明確な目的意識をもって実施しましょう。チェックでよくない結果が出るかもしれない懸念がある場合は、遅延に備えてチェックを早めに開始しましょう。
万が一チェックで予期していなかった結果が出ても、すぐにオファーを破棄すべきではありません。事実を念入りに確認し、候補者にも説明するチャンスを与えましょう。焦ってオファーを取り消してしまうとサーチはゼロからやり直しです!
6. お断りの連絡も丁重に
マネージャーや人事担当者として、理想の候補者にオファーをする時に心が浮き立つのは当然でしょう。できるだけ早く入社してほしいと気持ちが急くのもわかります。しかし、面接のために何度も会社に足を運んでくれた候補者、「是非御社に」と言ってくれた他の候補者を忘れてはいけません。きちんとお断りの連絡をするべきです。
候補者の63%が応募先企業とのコミュニケーションに「不満」
時間も労力もかかるタスクですが、最も良いのは面接官に直接電話してもらうことです。以後の転職活動やキャリアに役立つような建設的なフィードバックがあれば共有してもいいでしょう。転職活動は非常にエネルギーを消費するものです。ポジションをオファーすることはできなくても、その熱意に対して感謝の気持ちを伝えれば、気持ちよくプロセスを終えられるのではないでしょうか。
企業のブランディングにおいても非常に重要なポイントです。特に、僅差で次点につけていたような候補者であれば、次回採用を行うときに是非マークしておきたい人材です。誠意をもって対応し良い印象を残しておけば、お断りしても次につなぐことができます。
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7. オファーの回答はいつまで待つべき?
オファーを提示された候補者がその場で即決しなくても候補者を責めてはいけません。大きな決断ですから、家族と話し合ったり、友人にアドバイスをもらいたいという人もいるでしょう。
オファーの期限について、「●月●日●時までにオファーの回答をください」という会社もあれば、「できるだけ早く」と締切を明示しない会社もあります。どちらが正解ということはありません。とはいえ採用はビジネスマターですから、現実的に判断する必要があります。一週間あれば、候補者に考える時間を十分与えたといって差支えないでしょう。
一週間以上回答がない場合は候補者のコミットメントを疑ってもいいかもしれません。ビジネスパーソンとして信頼できるのかという疑問も生じます。「この会社で働きたい!」と本気で思っていたら時間がなくても奔走してなんとかするはずです。そうでないのなら、残念ですが思っていたほどモチベーションが高くなかった証拠かもしれません。ここで対応が遅れると#2の候補者にオファーするタイミングを逸してしまいます。放置せず速やかに状況を把握し、とるべき行動を決めましょう。