転職時の給与交渉の仕方
仕事のやりがい、望む生き方に合った勤務スタイルも大事だけど、転職するからには年収はしっかり確保したいーそんな方は多いのではないでしょうか。世界的に景気が停滞し、家賃や食費など家計にもインフレが波及している現在は尚更です。
Morgan McKinleyが最近行った調査(※)では、2024年に給与が上がると見込む働き手は57%。既存社員の給与が上がるならば、転職時のオファーも好条件を引き出せる可能性があります(※世界各地の働き手3400人以上、企業600社以上が回答)。
では具体的にどうすればいいのでしょうか?この記事では、転職時の給与交渉を上手に進めるための11のポイントを「交渉前」「交渉時」「交渉後」のシーン別にご紹介します。ご自分に相応しい給与を獲得するために是非お役立てください。
給与交渉前にやるべきこと
業界給与水準のチェック
平均給与を知らないと給与交渉を的確に進めることはできません。業界・職種別に平均給与はMorgan McKinleyの年収ガイドをどうぞ。仲の良い同僚や上司に聞いたり、業界に精通した転職コンサルタントに相談するのもいいでしょう。
総合的に判断できる材料を揃えておくこと
「働きがい」は給与の額面だけでは判断できません。例えば当社の調査では、世界の働き手の59%が現在の勤務先の福利厚生に不満だと回答しています。
基本給は会社の給与体系に基づいて決めるため、給与だけにこだわると交渉が早々に決裂するリスクがあります。一方、運用の柔軟性が高い手当や、コストが比較的低い福利厚生オプションなら譲歩を引き出せるかもしれません。時間やお金がなくて取得を保留していた資格はありませんか?オファーされた仕事に役立つ資格なら、転職先にその費用の負担を願い出てみるのも一計です。
給与が期待値に満たなかった場合でも、フレックス制や在宅勤務、健康保険などが充実していれば転職後のQOLが向上する可能性があります。どんなライフスタイルを目指したいのか、どんな条件だったら納得できるかを総合的に考えておくことが大切です。
上限の確認
採用企業の予算は青天井ではありません。職種ごとにサラリーキャップ(給与の上限)が規定されている場合もあり、会社としては簡単に例外を認められないのが現実です。サラリーキャップが期待値を下回ることがわかった場合は、給与交渉に望む前に上述したような給与以外の条件を考えておきましょう。在宅勤務や夏季休暇の延長、社外研修の参加費用などで話がまとまったケースもあります。
自信を持つこと
自信を持って交渉に臨むコツは自分の市場価値をしっかり把握し、相場観を鍛えておくことです。リサーチには年収ガイドが役立ちます。異業種や関連職の給与も調べておくと中途採用市場の全体像が見えてくるはずです。
転職経験者に給与交渉の失敗・成功談を聞いたり、友人・家族と交渉のロールプレイをするのも効果的です。転職先に中途で入社した知り合いがいれば話を聞いてイメージトレーニングをしましょう。よいアドバイスが得られるかもしれません。
給与交渉の場でやるべきこと
相手の懐具合や自分に対する評価がわからない中で給与交渉をするのは難しいものです。希望年収の伝え方を失敗して破談になってしまうかもしれませんし、そもそも駆け引きは苦手という方もいらっしゃるでしょう。将来の上司になるかもしれない相手と掛け合って心象を損なったらどうしよう、という心配もあります。会社側でも候補者に悪い印象を与えたくないと思っているはずですから、不安な方は是非転職エージェントを利用してください。
ご自身で臨む場合は以下の点に注意しましょう。
過去の給与について嘘をつかない
給与交渉ではできるだけよい条件を引き出したいのが人情です。でもだからといって過去の給与について嘘をついてはいけません。転職先の上司も人事も競合のおよその年収はわきまえています。入社の際に源泉徴収票の提出を求められる場合もありますので、ありのままを正直に伝えるのが鉄則です。
まずは先方から数字を引き出す
まずは相手から数字を引き出すのが交渉の基本。転職先の上司や人事担当者が想定年収を提示してくれるのを待ちます。その提案に対して、自分にはもっと価値があると感じた場合はやんわりとその気持ちを伝えてみましょう。
先に自分の希望年収を提示すると、それが転職先の想定や予算を大きく超えたものだった場合に先方の交渉意欲を大きく殺いでしまったり、強欲な人だと思われてしまうリスクがあります。
算出基準を教えてもらう
提示された年収の算出基準や評価基準を聞いてみましょう。掘り下げて根拠を聞くことで、転職先企業のロジックを理解し、交渉の余地がありそうな部分の検討をつけることができます。
自分の価値を客観的に示す
自分には提示された年収以上の価値があると思う場合は、その根拠を客観的かつ明確に示しましょう。特に市場平均以上の給与や、転職先の給与体系を逸脱した待遇を希望する場合は相応の理由がなければ受け入れにくいものです。転職先にどのような利益をもたらせるのかを説明し、納得してもらわなければいけません。
何があっても冷静・誠実にふるまうこと
給与交渉のやりとりは相手のあなたに対する認識・評価に間違いなく大きな影響を与えます。どのような展開になっても冷静を保ち、真摯な態度を崩さないようにしましょう。相手は将来の上司になるかもしれませんし、今回の交渉が破断になったとしてもまたどこかで顔を合わせることもあるかもしれません。信用を失するようなふるまいは避けてください。
給与交渉後にやるべきこと
オファーを受諾するか、再交渉を申し込む
交渉後は先方から数字が提示されるはずです。すぐに返事をする必要はありません。即答できない場合は持ち帰って考えたいと言えばOKです。検討の末オファーを受けたいと思ったら、担当者に連絡をして正式に受諾の返事をしましょう。
どうしても納得できない場合は再交渉を申し込むこともできます。
【注意!】提示されたオファーが妥当だと感じたら、欲を出さないこと。再交渉に応じてもらえない場合もありますし、入社後に求められる成果のハードルが上がったり、将来の給与交渉が困難になるリスクがあります。
話した内容は書面で残すこと
電話や面談など、口頭で数字を約束された場合も必ず書面にしてもらいます。先方が何も言わない場合は、こちらからお願いしましょう。 オファー受諾後は今の職場に退職を願い出る、転職先が提示してくれた給与に相応しい成果を出すという大仕事が待っています。言った言わないで揉めないよう、スマートに話をまとめたいですね。
自分のキャリアは自分で決める
転職には家族や転職先の上司など様々な人への配慮が必要です。でもこれはあなたのキャリアですから、人任せにしてはいけません。金銭的な報酬、やりがい、ワークライフバランス、将来のキャリアパスなど様々な「価値」のうち、譲れないものは何かをご自身でよく考えて納得のできる答えを出してください。
転職でも社内異動でも、新しい上司はあなたにフェアな待遇を与えたいと思っているはずです。新しいポジションでは担当する仕事の範囲が広がった、部下が増えたなど責任が増した方は、交渉した給与に見合った成果を出せるよう気を引き締めて仕事に臨みましょう。自分にはそれだけの価値があると、自ら勝ち取ったお金なのですから!