AI時代のコンサルタントに求められる能力
プロジェクトマネジメントにAI(人工知能)が活用されるようになり、コンサルタントの業務が大きく変わりつつあります。
AIが職場に登場したのは昨日今日のことではありません。ですが現在のAIは単なるサポートツールではなく、変革推進の原動力として使えるレベルにまで発展を遂げています。
コンサルティングやプロジェクトマネジメント、チェンジマネジメントの領域におけるAIはその好例と言えるでしょう。
“どんな経営判断にも自動化を適用できると考える経営幹部は全体の80% " - Gartner
経営判断を自動化できるなら、将来的には経営コンサルや戦略コンサルという仕事もなくなってしまう可能性さえあります。現状そこまでドラスティックな変化があるかはわかりませんが、今までコンサルの王道とされていた業務がAIに代替されつつあることは事実です。
AIの導入によりコンサルタントの業務はどのように変わってきているのでしょうか?また、これからのコンサルタントに求められるスキルはどのように変化しているのでしょうか?
AI導入でコンサルティング、チェンジマネジメント業務はどう変わる?
”今日、望ましい形で完了するプロジェクトは全体の35%に過ぎない。だがAIや機械学習等の先端技術により、2030年までにプロジェクトマネジメントの世界は大きく変わるだろう。” - Harvard Business Review
現代の企業は変化する市場環境に適応するため、事業を拡大するため、また革新を目指すために様々なプロジェクトを推進しています。様々なプロジェクトマネジメント手法を取り入れ、チェンジマネジメントの風土を育てることを専門とするチェンジマネージャーという職種もあるほどです。
このようなチェンジマネジメントの現場はAIの登場によってどのように変わってきているのでしょうか?
1. データドリブン・インサイトを活用した意思決定
AIが得意とするデータ分析。機械学習アルゴリズムは、人間にはぱっとわからないような傾向やリスク、オポチュニティを過去・現在(リアルタイム)のデータから瞬時に特定することができます。分析結果を意思決定に活かせば、期待する成果を引き寄せることができます。
例えばM&Aプロジェクト。
AIアルゴリズムに合併プロセス、過去のプロジェクト記録、および外部要因のデータを能動的に処理させ、シナジー効果が期待できる領域や潜在的なボトルネックを予測するというような使い方が考えられます。
こうしたインサイトを活かして
- 可能性のある領域を最大化しつつボトルネックを未然に防ぐような計画を立て、
- リソースを適切に割り振り、
- 進捗をリアルタイムで分析して機敏に軌道修正を行えば、
M&Aをスムーズに進めることができます。
データ分析は今まではコンサルタントの重要なタスクであり、スキルでした。ですがこれからは分析業務はAIが担うことになるでしょう。コンサルタントにはAIが生成したインサイトの検証・解釈や意味づけ、それに基づく戦略的な意思決定が期待されます。そのためには会社やビジネスの目標を理解し、その文脈においてインサイトを理解する能力が欠かせません。
2. 攻めのリスクマネジメント
AI予測分析はプロジェクトのリスクをシームレスに評価してくれます。様々な関係性やパターンを解析して「次に何が起きる可能性が高いか」を示してくれるのです。コンサルタントは先回りしてリスク対策を立て、起こりうるシナリオに備えることができます。
AIを活用した攻めのリスクマネジメントも可能です。例えば大企業のERP導入プロジェクト。導入をスムーズに進めるため、社内コミュニケーション・プラットフォームの文章を解析し、従業員の感情を評価して新技術に対する心理的な抵抗の度合いを測れるAIアルゴリズムが既にあります。
コンサルタントの経験値に頼っていた「予測」や「リスク管理」はAIを使ってより精密に、客観的に行うことができるようになります。新人コンサルタントでもベテランと同様なリスク予測ができるわけです。
チェンジマネージャーの仕事はむしろ、分析結果を踏まえて不満が噴出する前にコミュニケーション戦略を調整し、変革をマネージし、抵抗を感じている人が新技術を受け入れられるような仕掛けを考案することにシフトしていくでしょう。
3. プロジェクト・エクセキューションの自動化
エクセキューションにおいても自動化が進んでいます。AIプロジェクトマネジメントシステムはスケジュール管理やデータ入力、レポート作成などの面倒なルーチンワークを難なくこなしてくれます。バーチャルアシスタントの導入により、あちこちの部署にフォローを入れて進捗を確認して、という作業からも解放されるはずです。
コンサルといえばパワポ、という時代は終わります。ルーチンワークをAIに任せ、コンサルタントは革新的なソリューションのブレインストーミングや複雑な技術的課題に集中することが期待されるでしょう。
また上記の感情解析の例では、コンサルタントが解析結果を踏まえてコミュニケーションの方針を決定すれば、メール生成や校正などのタスクもAIに任せられます。やはりコンサルタントの重要スキルとされていた「コミュニケーション」がAIにより自動化されつつあるのです。ですがより高次のコミュニケーション、例えばステイクホルダーを対面で説得してバイインを確保したり、対立する利害関係を調整して落としどころを探ったり、コラボレーションを促したりといったスキルは増々重要になってくるのではないでしょうか。
4. 人間とAIの共同作業
AIは人間の専門知識に取って代わるものではなく、それを補完するツールです。
“人間とコンピューターがパートナーとして力を合わせれば、それぞれ単独では成し得ない高次元の革新が可能になる” - Innovation Accelerator
これからのAI時代には、人間はAIシステムとコラボレーションするスキルを磨くべきです。AIはデータに裏打ちされたインサイトを導き、定型的なタスクを処理することで人間の仕事を助けてくれます。一方人間は機械的に処理されたデータに倫理や感情を加味して的確な判断を下さなければいけません。プロジェクトや変革のコンテクスト、経営理念の本質を捉える力が問われます。
これはリソース配分の最適化でもあります。コンサルタントにはAIに代替できないような、創造的・戦略的な付加価値を出すことが求められているのです。
5. 学び続けること、倫理観を養うことの重要性
AI技術はどんどん進化しています。このような技術と協業するためには、コンサルタントは学び続けなければいけません。最新のAIトレンド、ツール、ベストプラクティスを常にアップデートしておかなければ、プロジェクトマネジメントやチェンジマネジメントに効果的にAIを活用することはできないでしょう。知識を更新し続けるマインドセットや、継続的な学習を促す組織文化が必要です。
また、AIにはアルゴリズムのバイアスや個人情報保護の問題など、倫理的な課題がつきまといます。企業は倫理的配慮を徹底し、AIシステムの透明性、公平性、規制基準との整合性を確保しなければなりません。
コンサルタントやプロジェクトマネージャーはAIが生成した洞察を検証した上で、会社の理念にふさわしい倫理的な決定を下すスキルを磨けば、市場価値を高められるでしょう。
AI時代のコンサルティング&プロジェクトマネジメント関連職種
このLinkedInの記事は、企業がDXやAI化を進める中で、チェンジマネ―ジャーはどのようにAIを活用できるかについて述べています。
変革のビジョンを示したり、社員の不安を汲み取ったり、チェンジマネジメントのための新しいアイディアを考えたり、といった場面でAIを活用できるのではないかとしています。
このような活動を通して、既存の職種の仕事内容が変容したり、新しい職種が生まれたりするはずです。AIの普及により今後影響を受けると考えられる、コンサルティング、プロジェクトマネジメント領域の仕事をリストアップしてみました。
AIによってなくなる/変わる可能性の高い仕事 | スキルアップが求められる仕事 |
データアナリスト | AI統合スペシャリスト |
ルーチンタスクのマネージャー | 戦略的な意思決定者 |
リスクアナリスト | チェンジ・ファシリテーター |
プロジェクトアドミニストレーター | 倫理・コンプライアンス関連職 |
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コンサルタントやチェンジマネージャーとして最前線で活躍し続けるためには、期待される働きがどんどん変わることを前提にスキルアップの機会を積極的に活用することが大切です。プロジェクトマネジメントとチェンジマネジメントのあり方はこれからもどんどん変わっていきます。それに合わせて適応し、成長し、AIツールを使いこなして最大限の成果を発揮できる人材が活躍するでしょう。
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