AI面接の種類と対策
満を持して臨んだ企業の面接。どきどきしながら面接官を待っていると、真っ白なスクリーンから「これから面接を開始します」と自動音声が流れてきた⁈こんなAI面接が既に登場しています。
人間の面接官に会うと思って身なりを整え、笑顔やアイスブレイクの練習をしてきたのに、相手はAIです。コンピューターに好印象を与えるためにはどうすればいいのでしょうか?
このレポートによると、採用関係者の79%が「近いうちにAIが採用や解雇を決定するようになる」と考えています。AIを活用した採用プロセスの合理化は既に進んでおり、IBM Watsonのタレント・プラットフォームやユニリーバ社のデジタル採用イニシアティブはそのさらに先の可能性を示唆しています。アマゾン、デルタ航空、P&G、シーメンスといった企業も、採用戦略強化のためにAIを導入済みです。
これからの転職活動では、AI面接に適応できないと選考を突破できない恐れがあります。面接対策についてはこれまでも情報を発信してきましたが、今後有力なオファーを手にするためにはAIについても知っておく必要があるでしょう。そこで今回はAI面接の特徴や種類、対策を解説したいと思います。
なぜ企業はAI面接を行うのか?
そもそもAI面接とは、人工知能(AI)技術を使って行う面接です。面接がAIだけで完結するものもあれば、部分的にAIを使うものもあります。このような面接では事前に録画された動画、文章による設問・応答、AI搭載チャットボットを活用して、候補者の資格、スキル、ポジションへの適性を評価するためにソフトウェアやアルゴリズムを使用します。候補者のデータ分析などのタスクでAIが人間の採用担当者を支援する「AIアシスト面接」もあります。
企業がAI面接を行う理由は様々ですが、一つの大きな理由は面接官の負担を軽減です。
また、AIを活用することで人間の先入観を排除し、採用プロセスの客観性を高める狙いもあるでしょう。
AI面接は大規模に実施できるため、より多くの有能な応募者と出会えるのではという期待もあります。
すでに採用活動にAIを導入している企業は、1人当たりの採用コストを35%削減しているといい、上記によるコスト削減効果も期待できます。
AI面接の種類
AI面接には大きく以下のようなタイプがあります。
録画した回答をAIが分析するタイプ:
このタイプのAI面接では、人間の面接官が登場しないことが多いです。事前に録画された質問が流れ、それに対する回答を録画します。そして回答の内容やコミュニケーション能力をAIが評価します。
人間の面接官がリアルタイムAI分析を活用して行うタイプ:
面接は人間の面接官が行いますが、回答をAIがその場で分析し、即時的にフィードバックしていきます。
AIチャットボット面接:
AIチャットボットが面接を行います。文章入力、または音声で一連の質問に答えます。
AIは何を評価できるのか?AIの能力と対策
【リアルタイムの行動分析、感情分析】
AIは日々賢くなっており、人間同士がどうやって意思疎通をしているかも理解できるようになっています。候補者の知識や経験だけでなく、ボディランゲージや感情も分析対象になっているのです。
- 顔認識:
最新のAIシステムは表情を分析して感情を推測することができます。笑顔や考え込んだ顔、不快な顔はもちろん、ちょっとした眉の動きなどを基に感情を解釈することができます。自分で気づかないような微細な表情も検知されている可能性があります。 - 姿勢やしぐさ、声のトーンの解釈:
姿勢、ジェスチャー、動作、声のトーンやピッチ、話す速度を分析し、話し手のやる気や自信、態度、エンゲージメントなどを測ります。 - 回答の間合いの評価:
質問に対する回答を返すまでの時間は、どれだけ準備してきたかを示す尺度となります。頭の回転の速さも見られていると思っていいでしょう。
対策
AIがどんなサインを読み取っているのかを知り、うつむきがち、早口、髪や顔を頻繁に触ってしまう等、自分の表情やボディランゲージの癖をコントロールできるよう努力するといいでしょう。こうした知識や訓練は面接官が人間の場合に相手の感情を理解する手がかりにもなるはずです。
普通の面接と同じですが、ポイントは正直に、誠意をもって臨むことです。回答は簡潔明瞭を心がけましょう。作り笑いや丸暗記した回答は逆効果です。信じがたいかもしれませんが、AIは本物の情熱を見抜けるのです。
【面接のカスタマイズ】
AIは求人内容や候補者の経験やスキルに合わせて面接をカスタマイズすることができます。
- ポジションに関する質問の生成:
募集要項やレジュメ・履歴書を読み取り、それに合わせた質問を生成することができます。 - 回答に応じたフィードバック:
候補者の回答に基づき、長所や改善点を分析してフィードバックすることができます。 - 質問の修正・調整:
候補者の回答に基づいて、質問の難易度やフォーカスを調整したり、深掘り質問を生成したりすることができます。
対策
このようなカスタム面接を突破するためには準備が大切です(応募前にこれを読んでいる方はレジュメをしっかり書くところから対策を始めましょう)。ジョブディスクリプションだけでなく、企業文化や経営理念、直近の事業やプロジェクトまで調べておくこと。質問に答える際は具体的な募集条件を意識し、それに合わせて自分の経験やスキルを語れるようにしておきましょう。また、ジョブディスクリプションにあるキーワードを使って、自分の価値観や目標が会社のミッションとどのように合致しているかを論じられるようにしておくとよいと思います。
【質問の自動生成】
AIは次のようにして自動で質問を生成することができます。
- ジョブディスクリプションの分析:
仕事内容や必須条件などからキーワードや重要な業務、スキル、資格などを抽出します。 - 質問ライブラリの活用:
ジョブディスクリプションの分析に基づき、ポジションや業界の質問バンクにアクセスします。 - アルゴリズムによる質問生成:
候補者の履歴書や、それまでの回答に応じてリアルタイムで質問を生成します。
対策
AIが生成する質問に備えるためには、ジョブディスクリプションや業界情報、典型的な質問例をしっかり把握するほか、面接をシミュレーションするAIプラットフォームを活用するのもいいでしょう。また、AI面接を経験したことのある人たちと情報交換をするのも有効です。
【予測分析・マッチング】
AIは予測分析によって候補者とポジションのマッチングをすることができます。
- 膨大なデータセットの分析:
AIアルゴリズムが膨大なデータセットを分析し、過去の採用成功例からパターンを抽出してマッチングをします。 - パフォーマンス指標の分析:
レジュメに記載した業務経験やスキル、学歴、面接の回答から得られた情報、更にはインターネット上の情報や行動履歴を基に、潜在的な職務遂行能力を予測します。
対策
このようなAIマッチングに対しては実績を定量化してアピールすることが大切です。応募時点でSNSに不適切な投稿がないかをチェックし、LinkedInなどのオンライン・プロフィールを充実させるのも有効です。
【自然言語処理(NLP)】
AIの自然言語処理機能(NLP)は飛躍的に向上しています。AIは高度に知的な聞き手だと考えるといいでしょう。コンピューターは以下のような情報を読み取っています:
- キーワードのピックアップ:
回答から重要と思われるキーワードをピックアップします。 - 文脈の解析:
前後の文脈から話の全体像をまとめることができます。 - 言外の意味の把握:
実際に言葉にしなかったことも読み取り、会話の全体的なトーンや感情を検出することができます。
対策
一言一句を慎重に選んで話しましょう。ジョブディスクリプションのキーワードをしっかり理解し、回答に積極的に盛り込んでいくこと。話の論点や結論を意識して回答を組み立てることも重要です。
これからAI面接を受ける方へ
以上、AI面接のタイプや機能、対策を解説しました。AI面接官には既に様々な機能が備わっていることがおわかりいただけたかと思います。
これから転職でAI面接を受ける方は、ご自身の権利とAIの潜在的な限界を認識すべきでしょう。AIによってデータがどのように収集され、利用され、保護されているかについて、気になる点があれば応募先企業に問い合わせてみましょう。候補者側からも倫理的なプラクティスを求めることで、公平・公正な雇用市場を実現することができるはずです。
また、AIの登場によって採用選考はどんどん変わっていくと考えられますが、AIが採用において重要な役割を果たす一方、最終的には「この人と働きたい」という人間の気持ちや判断が大切だということを忘れてはいけないと思います。AI面接にしっかり対処しつつ、人間力を磨いて理想の仕事を手に入れましょう!