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仕事のストレスに負けない!レジリエンスの高いチームを育てる工夫

仕事のストレスに負けない!レジリエンスの高いチームを育てる工夫
Submitted by Sayoojya on

先日LinkedInで仕事とストレスに関するアンケートをとったところ、「日常的にストレスを感じている」と回答した人は44%に上りました。対して、ストレスを感じることはほとんどないという人の割合は18%です。

社員や部下のストレスを放置するのは危険です。

ストレスレベルは生産性に直結します。WHOの報告では、うつ病や神経症によって世界で失われている労働時間は一年間で推定120億日分、生産能力に換算して約1兆米ドルのロスだそうです。

職場には様々なストレス源が存在します:

  • 業務多忙
  • 人員整理やリストラ
  • 上司による過干渉、またはサポート不足
  • チームの信頼関係の欠如、同僚との意見の対立
  • 時差のあるチームとのやりとり
  • 新技術やITシステムについていけない
  • 長時間のミーティングや議論につながるコミュニケーション不足
  • ワークライフバランスの欠如

ストレス要因をすべて取り除くことは不可能でしょう。そこで最近注目を集めているのが「レジリエンス」というキーワードです。

レジリエンスとは?

レジリエンス(resilience)とはバネのように、押しつぶされたり引き伸ばされたりしても元に戻る力をいい、転じて逆境を跳ね返す力、苦境をしなやかに乗り越える力を指すようになりました。

ストレスに対処する方法としては「鈍感力」というキーワードもありますが、こちらはストレスになりそうな情報を気にしない、スルーすることでストレスを回避する、という意味合いが強いかと思います。一方レジリエンスはストレスの原因をてこにして跳躍するような強さを言います。

レジリエンスが高い社員は職場で次々と降りかかる難題や様々な要求に動じることなく、仕事が増えても、組織が変わっても、難しい議論になっても、同僚と競争しなければいけなくなっても、上手に乗り越えることができます。

一方、社員のレジリエンスが低くストレスを溜め込んでしまうと社内にネガティブな雰囲気が蔓延し、究極的にはビジネスチャンスを逃したり顧客の不満を招いたりしてしまうでしょう。

チームのレジリエンスを高める工夫

ではどうすればレジリエンスが高いチームを育てることができるのでしょうか。

最新の心理学の研究では、レジリエンスが高い人にはある共通点があることがわかっています(興味がある方はこちらの George Bonannoの講演をどうぞ)。それは、どんな問題やストレス要因に直面しても、状況を前向きにとらえることができるポジティブ思考です。

何をいまさら、と思われた方もいるでしょう。ですがレジリエンスの基本は前を向く力です。ポジティブな社員は逆境を不幸ではなく課題として捉えるため、ストレスに押しつぶされにくいのです。

つまりレジリエンスが高いチームを育てる鍵はポジティブなムード、社員が互いを信頼し前を向ける環境づくりということになります。以下、部下のレジリエンスを高めるための具体的な方法をみていきます。

1. 信頼関係の醸成

社員が前を向くためには上下やヨコを気にしなくてもよいような環境が必要です。つまり「経営陣や上司⇔従業員や部下」という上下の双方向的な信頼関係と、「従業員同士の信頼関係」というヨコの信頼関係が必要なのです。

信頼とは困った時は必ず助けてもらえる、自分を故意に傷つけられることはないという安心感と言い換えることができます。このような素地があると社員は取り繕うことなく、正直に自分の考えや気持ちを述べることができます。

信頼関係を支えるのはオープンで正直なコミュニケーションです。定期的にチームミーティングを行って自由な意見交換や健全な議論を奨励しましょう。個人攻撃やお互いの足を引っ張るような言動を看過してはいけません。定例ミーティング以外でも、部下がリラックスして話し合えるような場を意識して設けるとよいでしょう。

信頼関係があれば自ずと助け合いの文化が育ちます。これがチームのレジリエンスを高める土台となるのです。

2. マインドフルネス

マインドフルネス(mindfulness)とは「今」「ここ」に意識を集中すること、またその態度です。「上の空」の反対の状態ですね。マインドフルネスに取り組んでいる企業はストレスに対処する能力、つまりレジリエンスが高いことが証明されています。生産性と創造性、EQを高める効果もあるそうです。

マインドフルネスを実践するには入社時の研修やリーダーシップ研修などで取り上げたり、パフォーマンスレビューの項目として導入するとよいでしょう。従業員に仕事でもプライベートでも使えるテクニックを紹介し、様々な場面で取り組んで貰うことが大切です。

例えばこのようなエクササイズがあります:

  • 会社でパソコンを開く前に数分間瞑想をする
  • 一つのタスクを終え、次のタスクにとりかかる前にひと息つく
  • 退社前にその日の出来事を振り返る時間をとる

研修の実施については人事のL&Dチームに働きかけたり、社内にリソースがない場合はマインドフルネス・ワークショップや研修を実施するプロにアウトソースしてもいいでしょう。

定期的な瞑想セッションを企画したり、オフィスに瞑想ルームを設置している企業もあります。

3. 仕事の意義を示す

人は自分の仕事が何の役に立っているかわからない、またはやってもやらなくても一緒、と思っていると仕事が投げやりになります。このような社員は仕事に対するコミットメントが低いため、困難にぶつかった時にすぐ折れてしまいます。

他方、自分が行っているタスクが会社の目標や理念の実現につながっていると感じられると多少のストレスがあっても乗り越えられます。「自分は大切な仕事をしている」という自負がある社員はレジリエンスが高いのです。

つまりチームのレジリエンスを高めたいと思ったら、一人ひとりが仕事の意義を理解できるよう手助けをしてあげればよいのです。

  • なぜ特定のアクションやプロジェクト、タスクを遂行する必要があるのか?
  • ある変化、出来事、決定の背景には何があるのか?経営陣、チーム、他部署の行動の背景にはどのような理由があるのか?
  • 会社は究極的に何を目指して動いているのか?
  • そのためにどのような段階を踏む必要があるのか?どのような計画を立てているのか?
  • その中で自分の部署やチームはどんな役割を担っているのか?何が期待されているのか?

部下の踏ん張りが足りないと感じている方は、仕事の意義を懐に落としてもらうことから始めてはいかがでしょうか。

4. 認知の再構築

私たちは言葉を使って周りの世界を認知しています。認知の積み重ねが思考であり、思考の積み重ねがやがて私たちの価値観や信念となります。

つまり私たちのマインドセットを形作るのは言葉であり、言葉をコントロールすることで認知を再構築(cognitive restructuring)しうるのです。

レジリエンスに話を戻せば、傷ついたり、厳しい状況に置かれたりしたときに肯定的な言葉を使えば思考は前向きになりますし、逆に否定的な言葉を使うと心の中にネガティブな回路ができてしまい、レジリエンスが低下するわけです。

部下がこのような言葉を口にしているのを聞いたことはありませんか?

  • XYZなどの問題が予見されるので、やっても仕方がない
  • プロジェクトが自分が思うように進まないので困る
  • わからないことや不確かなことがとにかく心配
  • 常に全員から好かれていたい、人に嫌われるのが怖い
  • 困難や対立に正面から挑むのはめんどくさい

このような部下はネガティブな思考が習慣化している可能性があります。プラス面を捉えにくくなっているので、次のような手順で一緒に認知の再構築を試みましょう。気づきを促すことができれば、レジリエンスを高められるはずです。

  • お茶やランチに誘う、散歩に行くなどしてオフィスを離れ、まずは落ち着かせる
  • 置かれている状況や今の気持ちを話してもらう
  • 状況や今後の展開についての「思い込み」がないかを観察する
  • 否定的な言葉や表現が出てきたら、違った見方もあることを提案してみる(否定的な言葉や気持ちの背後にある心理にも注目しましょう。自己評価の低さ、自信のなさ、失敗に対する恐怖など)
  • 最後に、状況や部下の考え・感情を一緒に検討し、より現実に近い、バランスの取れた見方を一緒に導いてみます

例えば部下が任されたプロジェクトがうまくいきっこない、と悲観している場合。話を聞いた結果、原因は自分のスキルに対する自信のなさだったとします。であれば、部下のスキルや知識、過去の成果を一緒に思い出して、そのプロジェクトを成功させられる可能性があるのではないか、と提案してみるのです。

極度のストレスを抱え込んでしまっている場合は、プロのコーチの力を借りてもいいでしょう。

結論

生まれつき楽観的な人や心配性の人がいるように、ストレスに対する反応は人それぞれです。また、レジリエンスは複雑で、経験を重ねて身につくこともあれば失うこともあります。

ですがレジリエンスは努力次第で高めることができます。ストレスの原因を取り除くのではなく、ストレスをばねにしていけるように導くことが成功するチームを育てる鍵なのです。