転職時に肩書き・役職にこだわるべきか?
仕事内容も給与も希望通りなのに、オファーレターに書かれていた肩書きにガッカリ…そんな経験はありませんか?
肩書きや役職、ジョブタイトルよりも中身でしょう。そう思っていてもやはり気になってしまう……そんな方は少なくないと思います。
ですが結論からいうと、肩書きを気にしすぎると転職のチャンスを逃してしまうリスクがあります。
なぜ肩書きに拘泥すると損なのか、肩書きの代わりに何を指針にしたらいいかについて考えてみたいと思います。
肩書きの心理学
まずは具体例を考えてみましょう。
これまで「マーケティング・マネージャー」として働いてきた友人Aが、大企業に「マーケティング・スペシャリスト」として転職したとします。責任範囲が広がり、給与もアップしたと言うけれど、心のどこかで「キャリアダウンじゃないかな?」という思いがよぎることはないでしょうか。
一方、現在「ジュニア・デベロッパー」として働いているソフトウェア・エンジニアのBさんは「シニア・デベロッパー」というオファーを提示されました。こちらの場合は、たとえ仕事内容は似ていて給与があまり変わっていなくても、キャリアアップしたような気分になりませんか?
このように私たちは案外肩書きやジョブタイトルに弱い生き物です。相手の肩書きによって態度を変えるほど露骨でなくても、肩書きが自分の体面に影響したり、自分のモチベーションにつながると感じているのですね。
ですが以下ご説明するように、肩書きに捉われすぎると転職活動では損をしてしまいます。
肩書きは業界や企業によってバラバラ
肩書やジョブタイトルには共通のスタンダードがあるわけではなく、各社が自由に決めています。このため、肩書きの常識や慣行は業界や会社、更には部署によっても違います。
ある会社では「マーケティング・マネージャー」と呼ばれている仕事は別の会社では「マーケティング・スペシャリスト」や「ブランド・ストラテジスト」と呼ばれているかもしれませんし、PMO(プロジェクトマネジメント・オフィス)では「スタッフ」が担当している業務に別の部署では「プロジェクト・コーディネーター」という肩書をつけているかもしれません。
企業文化や企業規模も影響します。大企業では肩書きのヒエラルキーが固まっていることが多いですが、皆似たような肩書で働いているフラットな組織もあります。このような企業では部署の垣根も低いことが多く、例えば「エンジニア」という役職であっても広範な業務をカバーしていたりします。
国や文化圏による違いもあります。Vice Presidentは日本では「副社長」の英訳として使われていることが多く、部長(Director)よりも格上ですが、欧米では逆のことが多いです。
また日本で「営業マネージャー」というと部下を率いてチームをまとめる存在、というイメージですが、英語の「Sales Manager」は営業プロセスをマネージする人という意味でマネージャーと呼ばれていることもあり、部下がいるとは限りません。
このように業界・組織や文化による違いがあるため、肩書きだけで業務範囲や序列を正確に判断するのはとても難しいことです。
肩書と実際の仕事内容がかけ離れている場合もある
肩書きがあまりあてにならないのは組織によって違うからだけではありません。そもそも肩書きが仕事の内容にマッチしていない場合もあります。
肩書は本来、その人の責任範囲や社内での立場を表現したものですが、時間の経過とともに仕事が変わっていった結果、気が付いたら肩書きがあまり合わなくなっていた、ということが起こります。
例えば次のようなケース。
- 組織の変化: 会社の構造、戦略、または優先事項の変化によって、担当する仕事や責任範囲が広がった
- 技術の進歩: 新しい技術やプロセスが導入され、タスクの内容ややり方が変わった
- チームの状況:チームメンバーが入れ替わったりしてチーム内での仕事の分担が変わり、受け持つ業務が変化した
また、アドミや一時的なプロジェクト、他部署との協働作業など、肩書ではカバーされない業務が発生することもあるでしょう。
ビジネスの世界は常に動いているので、社員に求められる役割が時間と共に変わっていくのは当然のことです。このような変化に合わせて肩書を変更する場合もありますが、あまり頻繁に変更するとかえって混乱するので仕事内容が多少変わったくらいでは変えないのが普通です。
肩書きに惑わされない転職活動
このように、肩書きはとても曖昧なものです。
ですが求人情報を検索する際、「人事マネージャー」や「企業内弁護士」のようにジョブタイトルで検索する方は多いと思います。肩書きや役職があまり当てにならないのであれば、何を軸によい転職活動を進めればいいのでしょうか?
ここではコア・スキルやコンピテンシーに注目することをおすすめします。転職サイトなどを見る際は肩書やジョブタイトルだけで判断せず、仕事内容や求められるスキルを確認するようにするのです。組織の中での立ち位置まで読み取れば尚いいでしょう。
例えば「マーケティング・マネージャー」という求人広告があったとします。肩書きからは戦略企画やリーダーシップに重点を置いているように見えるかもしれませんが、実際の仕事内容はコンテンツ制作、ソーシャルメディア管理、市場調査などの実務中心のポジションかもしれません。業務内容を注意深く確認することでデータ分析力、ライティング、外部ベンダーとのやりとり、リーダーシップなど、どんな能力が必要とされているのかがわかるはずです。
スキルや仕事内容に焦点を当てることで、肩書きだけでは見逃していたかもしれないチャンスを発掘することもできます。例えば、プロジェクトマネジメントを担当してきたが、PM経験を活かして挑戦できる「プロダクトマネージャー」の仕事だってあるのです。
もう一つ注意したいことがあります。それは、自分の英文レジュメを書く際は現職のジョブタイトルよりも仕事内容を表すキーワードに気を使うことです。
転職希望者から見て応募企業の肩書がわかりにくいのは先ほど述べた通りですが、同様の勘違いは人事担当者が応募者の役職名を見る際にも起こり得ます。こうしたアクシデントを防ぐため、相手にわかりやすい・伝わりやすい表現を心がけましょう。職務経歴書やカバーレターも同様です。応募先企業の肩書きや応募するポジションにボキャブラリーを寄せていくと尚いいですね。
ネットワーキングをして情報収集するのもおすすめです。よくある肩書やジョブタイトル、一般的な組織の構造がわかればかなり役に立つでしょう。
肩書や役職名は常に進化しているので、トレンドのジョブタイトルや新たに登場している職種をキャッチできれば求人情報の検索に役立ちますし、業界や主要企業の雰囲気を窺えるという利点もあります(運がよければ、転職市場には出てこない採用ニーズをキャッチすることもできるかもしれません!)。
本質を見極めて真のキャリアアップを目指そう
肩書きはポジションの概要を端的に表すものではありますが、業界・企業や組織の常識や慣行に左右されるものであり、ユニバーサルなものではありません。
転職活動を進める際にはジョブタイトルや役職名に惑わされず、必要なスキルや得られる経験、責任の範囲など、ポジションの本質を見極めるようにしましょう。
そうすることでより多くのチャンスを引き寄せ、結果的にキャリアアップの近道になるはずです。