採用再開への備え:コロナ社会におけるタレント・アトラクション
人手不足でヒートアップしていた人材獲得競争は新型コロナウイルスの蔓延で一時休戦状態になっています。しかし最近、近い将来再び人材を巡る争いが活発化するという報告書がいくつか発表されました。過去の危機でも収束前後に求人が急増する時期が見られたので、驚くにはあたらないかもしれません。このフェーズがいつ到来するかはわかりませんが、いつでも動けるようにポストコロナを見据えた人材戦略を練り上げておくに越したことはないでしょう。
コロナ社会におけるタレント・アトラクション
パンデミックを切り抜けるキーワードはイノベーション、クリエイティビティ、コラボレーションだと言われています。この三点は今後の転職市場で優秀な人材を惹きつけるためにも大切なテーマです。
新しい事業環境に適応するためには適切な人材が必要です(※英文記事のみ)
今までと違う事業環境で生き延びるために何をすべきか?そのためにどんなリソースが必要か?その答えが新たな人材ならば、外部から採用しなくてはいけません。
しかし転職市場の情勢もコロナの影響で変わっています。ウィズコロナ/ポストコロナの採用戦略を考えるにあたって注意したいこと(※リンク先英文記事のみ)をまとめてみました。
今の転職者は何を重視してる?
以前、転職者の最大の関心といえば年収でした。しかし近年は候補者のプライオリティが変わってきていると感じます。金銭以外の条件を重視するプロフェッショナルが増えているのです。現在のような危機においてはこうした傾向が続くと考えられます。
以下、転職希望者との面談を通して感じるポイントをいくつか挙げておきます。
将来のキャリア展望:転職先で中長期的にステップアップできるかどうかは最近の候補者の間では非常に重要なファクターで、オファーを受けるかどうかの判断を左右する場合もあります。技能・技術・知識やソフトスキル、リーダーシップスキルなど、幅広いサポートや、キャリアアップの道筋や評価軸の透明性が期待されています。
トレーニングやスキルアップ、再教育の意義を過小評価してはいけません(※リンク先英文記事のみ)。今の会社でこれ以上成長できないと感じたから転職に踏み切った、という候補者は非常に多いからです。優秀な人材を惹きつけるためには研修の拡充など、社員が学び続けられる環境づくりが大切です。面接中のポジションでいかに新しいスキルを得られるかというだけでなく、その職責を習得した後の成長機会まで説明できるとよいでしょう。既にこうした取り組みを実施している場合は積極的に候補者にPRしましょう。特に長期的な成長を重視する人材にとっては大きなセールスポイントになります。
研修やスキルアッププログラムはタレントアトラクションやリテンションに役立つだけでなく、会社に足りない知識や技能を補う手立てとしても有効ですので、しっかりした体制を整えたいところです。
意味のある仕事に携わり、能力や貢献を認めてもらえること:組織の歯車としてあくせく働くことにやりがいを見いだす人はあまりいません。最近の転職希望者の傾向としては、間接的でもいいので社会に貢献していると感じたい、自分の能力や働きを認めてくれる会社で働きたい、と考えている人が多いと思います。
自分のバリューを認めてもらうことは従業員エンゲージメントやリテンション率にも直結します。中途採用面接で仕事内容を説明する際には、会社の事業にはどのような社会的意義があるのか、その中でどのような大切な役割を担う仕事なのかといった点を伝えるよう、面接官に指導するとよいでしょう。CSRなどの取り組みをアピールするのも効果的なので、採用をまだ再開できないという企業は今のうちにCSR戦略の見直しを進めるのも良策です。
柔軟性・自由度:柔軟性はフレックスタイム制や在宅勤務といった勤務制度の設計に話が偏りがちですが、転職者が求めているのはそれだけではありません。例えば福利厚生も、全社員に画一的なものを提供するのではなく、パッケージをカスタマイズするなどの工夫はできないでしょうか?より幅広い人材を惹きつけることができるはずです。
ウェルビーイングなどのサポート体制:新型コロナウィルスの蔓延により、ウェルビーイングなど社員のケアが大切になっています。先が見えない状況で見えないストレスや不安を抱えている社員は少なくないでしょう。社員が心身の健康や金銭面の心配なく、安心して働けるサポートが欠かせません。
転職市場でもこうした情報を求める候補者が増えています。取り組んだ内容は積極的に情報発信して、ポジティブな企業イメージをつくりあげていくことが大切です。
組織や仕事の安定性:現在のように経済や社会が不安定なときは、人は仕事や会社に安定性を求めるものです。クビにならないか、減給にならないか?会社は倒産しないか?こうした不安に応え、うまくPRすることがタレントアトラクション上重要になってきます。
先行きへの不安がなくなると、既存社員のパフォーマンスも上がり(※リンク先英文記事のみ)、会社にとってはいいことづくめです。
カルチャーと人間関係の引力
会社の評判は大切です。実際に働いている社員が感じる社風、戦略的に打ち出したエンプロイヤーブランディング、消費者が持つイメージ…。こうした評判は転職者が応募を検討する際に間違いなく作用します。日頃からのブランディングはもちろん、選考においても会社のカルチャーが伝わるプロセス作りが大切です。「働いてみたい」と思ってもらえるブランド力は有能な人材を惹きつけたいと思ったときに強力な味方になってくれます。
こちらの動画では会社のカルチャーをより良い方向に導くコツをご紹介しています:
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採用においてポジティブなブランドイメージを作り上げるためには、一人ひとりの候補者と良好な関係を築く努力が大切です。オファーを受けてくれる可能性が高まることはもちろん、現場のマネージャーがソフトスキルを磨けるという利点もあります。面接過程でカルチャーを理解してもらうことで、入社後のミスマッチを防げるという利点もあります。
採用活動にテクノロジーを
ロックダウンやパンデミックで正の側面と呼べるものがあるとすれば、それは世界中の企業やビジネスパーソンがテクノロジーを駆使して危機を乗り切ろうとするレジリエンスを見せたことでしょう。外部要因によって否応なくテクノロジーを導入したとはいえ、今回の危機でデジタル化が大いに進んだことは事実です。
出典: Gartner
デジタルに強い社員が国境に縛られずに結集してビジネスをするという構想はコロナ以前から提起されていましたが、バーチャル空間で社員がつながれる環境をつくり、エンゲージメントを高めることは今や企業の必須課題といっても過言ではないでしょう。
採用活動においてはウェブ面接やリモートでのオンボーディングなど、既に多くの企業が遠隔採用(ウェブ採用、デジタル採用)を取り入れています。対面の面接が制限されたことで加速したわけですが、採用する側もされる側も、今までのやり方だけに頼る必要なないことに気がついているはずです。
テクノロジーを活用することで、今までより大きなタレントプールから人材を採用できるようになります
「人工知能(AI)の登場が採用のあり方を変えるか」というのもここ数年ホットな話題でしたが、厳しい経済状況下で企業がコストカットを迫られれば、AIも一気に普及する可能性があります。スクリーニングや選考プロセス管理など、既に採用にAIを活用している企業もあります。また、社員のパフォーマンスモニタリングなどにAIを取り入れ、個別の課題の見極めや人事考課支援に利用する動きもあります。
新しい人材で切り開く、新たな戦略的可能性
コロナ禍で転職を考え直している人もいますが、逆に転職へのモチベーションが高まったという候補者もいます。その根底には「何のために働くのか」「どのように働くのか」という考え方のパターンのシフトがあるように思います。
アフターコロナの世界では今まで以上に「人」を大切にしようという考え方が主流になるのではないでしょうか。そしてそのためにテクノロジーの助けを借りよう、という動きが加速すると考えられます。新しい環境で競争力を維持するためにはどうすればよいか?そのために必要なのはどんな人材か?ー本当の意味での「採用戦略」が求められています。