転職活動に使えるAIツール
AIに仕事を奪われないか心配、という方も多いと思いますが、仕事探しを手伝ってくれるAIが既に登場しているのはご存じですか?
転職活動は時間も労力もかかります。仕事が終わった後の時間や週末をつぶしてやるとなれば尚更です。今の仕事に満足しているわけではないけれど面倒だし…とつい後回しにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ですが業界や企業、キャリアのリサーチに使えるAIや、履歴書や英文レジュメのスクリーニングに使われるAIに対抗できるレジュメ作成AIを上手に活用すれば、かなり手間を省ける可能性があります。
このようなツールはどんどん進化するでしょう。実は採用側でもマッチングや書類選考にAIの導入が進み始めているので、採用活動・転職活動のやり方はこれから大きく変わると考えられます。
一方、現段階で転職活動にAIを活用している人は多くはありません。Morgan McKinleyがLinkedInで「面接対策にAIツールを活用していますか」という簡単なアンケートを行ったところ、次のような結果となりました:
“面接対策にAIを活用していない人は6割“
Morgan McKinleyが昨年末に行った転職意識調査でも同様の結果が出ています。仕事探しや面接にAIを活用している人は少数派に留まり、AIを活用していない人が73%に上ります。
そこでこの記事では、転職活動のどんな場面でAIを活用できるのか、どんなツールが登場しているのか、そして活用する際の注意点を見ていきたいと思います。
転職活動に使えるAIツールと具体例
応募書類やレジュメの作成支援:
転職活動にAIを活用したことがあるという人のうち、レジュメの作成にAIを使った人は42%、カバーレターの作成に使った人は50%でした。特にキーワードの分析はAIの得意分野です。レイアウトの整理や文章の校正、適切な表現の提案なども期待できます。
面接対策:
AIは面接対策にも使えます。転職活動にAIを活用したことがあるという人のうち、タスクや質問に対する回答の作成に使った人は30%、面接の練習に使ったという人は32%でした。面接のシミュレーションができるだけでなく、回答内容に対するフィードバックやボディランゲージに関するアドバイスも得られます。
キャリアスコアの算出:
NAVというサービスは、キャリアのスコアを算出するAIツールです。個人の信用力を点数化する信用スコアのように、ユーザーの仕事の安定度、スキルの習得度、業界動向などの要素をAIが総合的に分析・評価してスコアをはじき出します。キャリア・バリューを高めるためのアドバイスやコーチングもしてくれます。
退職願・退職届の作成支援:
退職願・退職届のテンプレートは今までもありましたが、Reziは英文の退職願を自動生成してくれるAIツールです。デリケートな文書をサクッと作成できるのは嬉しいですね。
AIレジュメ・ビルダー:
英文レジュメの作成が苦手な方に朗報です。AIがあなたの経歴と募集要項を分析し、キーワードを提案したり、箇条書きを作成してくれたりします。採用企業が活用しているATS(応募者追跡システム)への対応もばっちりです。もちろんこれをそのまま提出できるわけではありません(また、すべきでもないでしょう)が、たたき台として使えばかなりの時短になるはずです。
【英文レジュメ作成AI】Jobscan、SkillSyncer、Resume.com、Kickresume、Rezi、Skillroadsなど
求人情報の収集:
たくさんの求人を見ていると情報が多すぎて迷子になることはありませんか?そんな時はAIの力を借りてみましょう。
AIツールはただの検索エンジンではありません。あなたのスキルや経験、キャリア目標に基づいて情報をフィルタリングして、あなたのキャリアに合いそうなものをピックアップしてくれます。
【求人検索AI】Talentprise、Pyjama Jobs、Fortay、LinkedIn、Pathrise、Indeed
チャットボットやAIアシスタント:
条件に合った求人情報を集めたり、ユーザーに合わせたアドバイスを行ったり、レジュメの改善提案をしたり、面接の質疑応答をシミュレーションしたりと、様々な活用方法が考えられます。
ChatGPT、Geminiなど:
生成AIをベースにしたChatGPTやグーグルGeminiなどの会話型AIは、求人広告を分析してレジュメに書き込むべきキーワードや最適なフォーマットを提案するといったことができます。レジュメの添削や、わかりやすく、採用担当者の目に留まりやすいレジュメの作成に役立つでしょう。
想定問答のシミュレーションや回答の評価や改善提案も可能です。コーディングテストの練習にも活用できます。
それだけではありません。あなたのスキルや経験、目指す業界などのキーワードを示せば、転職サイトだけでは見つけられなかった求人情報を発掘できる可能性もあります。
油断禁物!採用企業もAI対策をしています
応募者がAIを使って履歴書を最適化したり、面接の回答を生成させたり、コーディングテストの練習をしたりしていることを採用企業が知らないわけはありません。
特に自宅で受験するテストや、準備する課題、プレゼンなどはAIを使っているかどうかを監視することは困難です。このため、候補者の本当の実力や資質を測るために、企業側も様々な工夫を取り入れ始めています。
その一つが、暗記や単純なセオリーだけでは答えられないような質問の導入です。簡単に白黒をつけられないような複雑な問題や、リアルな課題を提示して、候補者の創造力や適応力、コミュニケーション能力を図ろうというのです。いずれもAIだけでは対応が難しいスキルです。
例えば行動面接や状況面接。「チームで対立が起きたとき、あなたはどう行動しましたか?」のように、これまでの行動パターンを答えさせる質問や、ビジネスケースのようなシナリオを設定して「あなたならどうしますか?」と問う質問などを通じて、問題解決にあたる姿勢や考え方、対人スキル、会社の理念や文化との相性を浮き彫りにするのが狙いです。
このように、AIは転職活動の手間を省略できる便利なツールですが、最後はやはり日頃の積み重ねや人間力が大切です。
転職活動でAIを活用する際の注意点
最後に、転職活動にAIを活用する際の注意点をまとめておきます。
AI生成コンテンツをコピペしない:
言うまでもありませんが、AIが生成した英文レジュメやプレゼンをそのまま提出すべきではありません。AIは事実を誤ることもあれば、微妙なニュアンスを理解できるわけでもありません。必ず自分の目でファクトチェックをし、内容を加筆・修正して自分らしいレジュメに仕上げましょう。
カンニングに使わない:
テストでのカンニングなどにAIを使わないこと。企業は誠実で信頼できる人材を求めています。不正が見つかった場合は選考失格となるでしょう。
AIが提案したキーワードに合わせて経歴を誇張しない:
AIが提案したキーワードに合わせてレジュメを書こうと、経歴を誇張してはいけません。同様に、AIが生成した模範回答が素晴らしいからと、自分の経歴に当てはまらないのに使用してはいけません。
リアルなネットワークを疎かにしない
AIが集められる情報と、リアルなネットワークから入ってくる情報は違います。自分の人脈や転職エージェントの知見を代替するものとしてではなく、補完するものとしてAIを活用しましょう。面接官から得られる情報も貴重です。
プライバシーやセキュリティに配慮する:
レジュメには個人情報がたくさん含まれています。AIツールを使用するときはデータの安全性に十分に配慮しましょう。データ保護や倫理に配慮して運用されている、信頼できるプラットフォームかどうかをよく吟味してから利用すべきです。
自分の頭で考えること:
AIは様々な提案をしてくれますが、その提案をうのみにしないこと。AIに投げかけたプロンプトが適切だったかも含めて必ず批判的に検討し、最後は自分の頭で考えて決めましょう。
直感やカルチャーフィットも大切に:
AIが診断したキャリアパスや推奨した仕事が最善の選択肢とは限りません。スキルと仕事内容のフィット感、キャリアパス、チームの雰囲気や企業理念など、AIではわからない要素も考慮して最終的な判断を下すべきです。
もうおわかりかと思いますが、AIはあなたの思考や判断を助けるツールに過ぎません。転職をするのはあなたであって、AIではないのです。その点を十分に踏まえてAIを上手に利用すれば、転職活動を効率的・効果的に進められる可能性があります。
AIを上手に利用して、理想のキャリアを切り拓いていきましょう!