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なぜジョブホッピングをする人が増えているのか?

なぜジョブホッピングをする人が増えているのか?
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かつては職歴に空白期間があったり、平均在職年数が短かったりする候補者は敬遠されたものでした。ですが現在労働人口の大半を占めるミレニアル世代とZ世代(※)には転職をポジティブに捉える人が多く、いわゆる「ジョブホッパー」が少なくありません。

※ミレニアル世代とは、一般に1981年から1997年の間に生まれた人のこと。Z世代とは1996年から2015年の間に生まれた人のことです。

そもそも「ジョブホッピング」とは?そして、なぜジョブホッピングをする人が増えているのでしょうか?また採用企業はジョブホッパーを受け入れるようになってきているのでしょうか?

ジョブホッピングとは?

ジョブホッピングとは、比較的短期間で職を転々とすることです。また、そうした人のことを俗にジョブホッパーと言います。

リクルート社の調査では、Z世代の転職は5年間で約2倍になっています。dodaの転職意識調査でも、年代が若いほど転職をポジティブに捉えている人が多いことがわかっています。敢えて契約・派遣で働くハイスキル人材が多いのも興味深いトレンドです。

海外ではこの傾向は更に顕著で、ギャラップ社やLinkedInの調査で同様の結果が出ています。

ジョブホッパーのリアル

ではジョブホッパーとは実際にはどんな人物なのでしょうか。

例えば現在28歳のTさん。新卒として大手製薬会社に入社し、営業職を経験した後、3年目に外資系コンサルティング会社のリスク・コンサルタントに転身。2022年に再び転職し、現在は外資系のメーカーのコンプライアンス・チームで働いています。

そんなTさんは「転職を自分のキャリアの方向性をコントロールする方法」と捉えているといいます。一度目の転職は汎用性の高いスキルを獲得したいと考えたため、そして二度目はコロナ禍で人生やキャリアについて考えた結果、プライベートも大切にできる職場で、今後も長く続けられそうな職場を選びました。

その結果、自分らしく働くことができているだけでなく、転職しなくては得られなかったような貴重な経験を積めて、新たな出会いを通して視野や人脈も広がったと感じているそうです。

"働き手の80%は、キャリアの成功には人脈作りが不可欠だと考えており、ジョブホッピングはそのチャンスを手にする一つの方法なのです" LinkedInより

ジョブホッピングのメリット

TさんのようなZ世代の働き手はジョブホッピングに様々なメリットを感じています。例えば次のようなものです。

  • スキルアップのチャンスが得られる:新しい会社や仕事では今までと違うタスクや業務にチャレンジできるため、スキルの幅が広がり、より「使える」人材になれる。
  • 人脈が広がる:転職をすると新しい同僚や顧客、メンターとの出会いがある。こうした出会いを大切にしていけば、人脈や視野が広がるだけでなく、自分の成長にもつながる。
  • 年収がアップする: 転職時に給与交渉ができる。
  • 自分が「本当にやりたいこと」を模索できる: ジョブホッピングを通して様々な業界や職務に触れ、「自分が本当にやりたいこと」を追求できる。

Z世代はなぜジョブホッピングをするのか

このようにジョブホッピングを肯定的に捉えるZ世代は身勝手だと感じる方もいるでしょう。

ですが本当にそうでしょうか?

Tさんを始めとするZ世代の意識の根底にあるのは「会社は最後まで面倒を見てくれない」という認識です。終身雇用を期待できないなら、自分のキャリアは自分で切り拓かなければいけないと考えるのは当然の発想でしょう。

また、ITやテクノロジーの世界では求められるスキルがものすごいスピードで更新されていきます。AIの登場によって今ある職種がどんどんなくなっていくとも言われています。Z世代がスキルアップに積極的なのはこのような危機感もあるのです。

PwCが2020年に全国の正社員3000人を対象に行った調査では、Society 5.0時代の到来に際してキャリアに不安を感じている人は66.5%に上ります

仕事が全てではない、と考える人も多いです。Z世代には自分が望む生き方ができるような仕事・職場かどうか、或いは自分が関わった仕事の先に「よりよい世界」があるかどうか、を重視する傾向があります。

このように見ていくと、ミレニアル世代やZ世代のジョブホッピングは身勝手ではなく、先行きが不透明な現代を生き延びるための戦術とも言えるのではないでしょうか。

Job Hopping Advantages

企業の複雑な立場

それでは、採用企業はジョブホッパーをどのように捉えているのでしょうか。

企業の立場は複雑です。

企業側も、ジョブホッパーがもたらす価値を認識していないわけではありません。若い働き手は会社に新しい風を吹き込み、今までにない視点や革新的なアイディアをもたらしてくれます。様々な世代の人材が混在するチームはダイナミックで、企業文化を豊かにし、前向きな変化を起こすことができるでしょう。

しかし、ジョブホッパーの採用は企業にとってリスクでもあります。時間と費用をかけて育成しても、早期に他社に移られてその投資を回収できないかもしれないからです。

Society for Human Resource Management (SHRM)によると、従業員を採用し直すコストはそのポストの年俸の50%から60%にもなります。

勤続年数が長い社員=優秀な人材か?

上記のようなコストを考えると、ジョブホッパーよりは一社でそれなりの期間務めてきた人材の方が望ましい、と結論付けたくなります。

日本でも海外でも、中堅からシニア層に多いこのタイプの人材はとにかく組織に忠実です。ボーナスの多寡や自分の都合で会社を見捨てたりせず、雑務や残業も厭いません。会社の仕組みややり方をよく理解し、企業文化を若手に伝えてくれます。同僚や顧客と強いつながりを築いて帰属意識を見出し、会社にとっては頼れる存在です。

ですが同じ会社にいるということは、違うやり方や異なる業界の慣習・考え方に触れる機会がないということでもあります。自社のことは知り尽くしていても、転職組のような多様なスキルセットを育てる機会には恵まれていません。

また、居心地のよいルーチンに満足してしまって向上心がなかったり、新しい考え方や変化に抵抗を示す人もいます。

このように考えるとジョブホッパーとそうでない人と、どちらが会社にとって望ましいかを一概に判断することはできないはずです。

採用企業のジョブホッパーに対する意識の変化

企業のジョブホッパーに対する意識は確実に変化しています。

結論からいうと、ジョブホッパーを受け入れる姿勢に転じているのです。

背景には今の労働市場の状況があります。まず、転職に積極的なZ世代やミレニアル世代が現役世代に占める割合は年々増えていること。加えて今は人手不足やスキル不足も深刻です。ジョブホッパーを門前払いしていては採用がたちゆきません。

転職組がもたらす多様性や異業種の知識・経験、新たな視点に目を向ける企業も増えています。適応性や革新力、人脈構築力が評価されるようになっているのです。

更に一歩踏み込んで、ミレニアル世代、Z世代のキャリアや働き方の理想を支援する職場環境を構築しようとしている企業もあります。新しいスキルの獲得やチャレンジを応援する仕組みを導入したり、従業員エンゲージメントの向上に体系的に取り組んだり、CSRやサステナビリティ、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)、その他若い世代が共感できるようなビジョンやミッションを模索したりといった施策が進められています。

転職をする時の注意点

このように、採用企業側のジョブホッパーに対する偏見は薄らぎつつありますが、だからといってやみくもに転職をすることはおすすめしません。雇用は相手があって成立する相互関係です。自分の都合ばかり主張すると、いずれどの会社からも受け入れてもらえなくなります。大切なのは新たなチャンスをつかむことと、チャンスをくれた会社に報いる姿勢のバランスです。そのためには次のような点に注意しましょう。

  • 明確かつ現実的なキャリア目標を設定すること
  • 目標に近づけるような転職しかしないこと
  • 自分の成長やスキルアップにつながらない場合は転職しないこと
  • 理念や価値観に共感でき、職場環境も充実した会社を見つけたら献身的に働くこと
  • 仕事や職務にやりがいを積極的に見いだすこと

いかがでしたか。現代のジョブホッパーは必ずしも腰を据えて働けない、人間関係を築くのが苦手な人ではありません。変化が激しい世界でキャリアを築くにはどうすればいいかを真剣に考えている人材である可能性があります。多様なキャリアジャーニーを認める用意がある企業にとっては、人手不足の現状を救う貴重な戦力となってくれるのではないでしょうか。

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