フィンテック企業が求めるスキルや適性
テクノロジーを駆使して今までの金融のあり方を刷新するフィンテック。進化を続ける金融業界の最先端では、どんなスキルが求められているのでしょうか?
ボストン・コンサルティング・グループが2023年5月に発表した Global FinTech 2023: Reimagining the Future of Finance(リンク先英文のみ)によると、世界のフィンテック企業は2022年に市場価値を落としたものの、これは短期的なトレンドで、長期的にはディスラプティブ技術やデータドリブンのインサイトを提供するビジネスは成長を続ける見込みだと言います。
それはフィンテック企業の採用活動を見ていてもよくわかります。スマホで国際送金ができたり、数分で口座開設ができたり、P2Pレンディングのように銀行を介さずに融資を受けられたりと、次々に斬新なビジネスモデルが生まれており、優秀な人材は新興企業でも伝統的な金融機関の新設フィンテック部門でもひっぱりだこです。
年収水準も高く、「高収入の仕事ランキング」ではフィンテック営業部長が6位に入っています。フィンテックのアカウントマネージャーの平均年収も年々増加しています。
フィンテックで求人が多い職種
では、どんな職種で採用が活発なのでしょうか?フィンテックというとITや技術者のイメージが強いかもしれませんが、採用している職種はエンジニアだけでなく、フィンテックのマーケティングや営業人材、法務・コンプライアンス、IPO準備やIR担当者に至るまで、実に様々です。
300Hoursは、最も需要の高いフィンテックの職種をいくつか挙げています:
- データサイエンティスト
- クオンツ・アナリスト
- コンプライアンス・オフィサー
- リスク・アナリスト
- 財務分析、FP&Aアナリスト
その他、ビジネスアナリスト、ソフトウェア開発エンジニア、サイバーセキュリティ・エンジニアなどの募集も世界的に増加傾向です。
日本でも様々なフィンテック求人が出ています。
新たな体験を生み出す技術力、テックスキル
そんなフィンテックではどのようなスキルが求められているのでしょうか?
一番はやはりテクノロジーです。
ビジネスの中核となる画期的なサービスを開発できる人材、すなわちPython、Java、Rなどのプログラミング言語や、ブロックチェーン 、DevOps/DevSecOps、サイバーセキュリティ、人工知能(AI)、機械学習(ML)、ビッグデータ、クラウド・コンピューティングなどの専門知識がある人材の需要は高いです。
一方、営業やコンプライアンスという形でフィンテックに参画するにしても、先端技術の知識やITの素養、新しいツールやプラットフォームを使いこなす能力は非常に重要です。テクノロジーリスクを評価し、適切な対策を講じるリテラシーも欠かせません。
こうしたITスキルがなければ、フィンテック企業は破壊的な可能性を秘めたソリューションを世に送り出すことはできないでしょう。
業界知識、戦略企画能力
フィンテックではまた、顧客やビジネスのペインポイントを理解している(=業界知識)人材も重宝されています。
テクノロジーの目新しさだけでは駄目で、テクノロジーを使って顧客体験を具体的に改善できなければ意味がないからです。
このような理由から、特に伝統的な金融機関のフィンテック戦略においては、ビジネスやオペレーションの知識が欠かせないと言います(KPMGのFinTechレポートより)。フィンテック・ベンチャーでも銀行や証券、監査法人の出身者がたくさん活躍しているのもうなずけます。
また、税務、監査、会計、財務など、経理のスキルや知識も有用です。
金融やファイナンスの土台がある方は、新技術やプロセスの情報収集に努め、業界イベントやオンライン講座に参加するといいでしょう。
コラボレーション&コミュニケーション能力
LinkedInが行った調査では、経営者の57%がコミュニケーションやコラボレーションといったソフトスキルを、技術的なスキルと同程度(またはそれ以上)に重視していることがわかっています。
フィンテックも例外ではありません。組織規模が比較的小さく、且つ部署横断的なチームで動くことが多いため、チームワークやコラボレーション能力は必須スキルです。
例えば、以下のような人材は高く評価されます:
- 同僚と協力して効果的に仕事を進められる
- 複雑な概念や技術を、専門外の同僚や顧客にわかりやすく伝えられる
- エンゲージメントを高めるのが得意
- 時差がある海外拠点のメンバーと協業できる、リモートでのコラボレーションができる
- 国際的なチームにおいて英語でコミュニケーションがとれる
創造力、イノベーションに対する姿勢
また、企業は斬新なアイディアを持った人材、柔軟な発想やアプローチができる人材、前例にとらわれないチャレンジ精神のある人材を求めています。イノベーションはフィンテックの核心ですから、当然の結果かもしれません。
デロイトの調査によると、金融業界の経営幹部の82%が、イノベーションは会社の最重要課題の一つであると考えています。既に市場シェアが新興フィンテックに脅かされていると感じている金融機関が多いことと無縁ではないでしょう。
特にコンプライアンス職では、革新性と法規制遵守をいかに両立させるかが腕の見せ所です。伝統的な金融機関では守備的な役割を担うことが多いですが、フィンテックではプロダクト側と一緒にクリエイティブなソリューションを考える力も問われます。
データ分析力
データマネジメント・スキルを求める求人も多いです。膨大な量の金融情報の裏に隠されたストーリーを解き明かす鍵はデータ分析にあります。例えば:
- 自動化によって反復作業を効率化し、より多くのデータを処理できるようにする、戦略企画の時間を生み出す
- ぱっと見てわかりやすいダッシュボードを使って、フィンテック・データに命を吹き込める、データドリブンな意思決定をサポートできる
- データ構造を分析し、パターンの発見、異常の検出、予測モデル開発を進められる
このように、テクノロジーやツールを駆使してデータを分析し、ストーリーを浮き上がらせることができる人材はフィンテック業界にとって貴重な存在です。
サイバーセキュリティ、ブロックチェーン
サイバーセキュリティやブロックチェーンそのものをビジネスとしている企業やサービスはもちろん、それ以外のフィンテックでもこれらの技術は注目を集めています。
テクノロジーへの依存度が高まり、サイバー攻撃の脅威が常に存在する中、情報セキュリティ体制の整備は喫緊の課題です。お金を扱うビジネスにおけるその重要性は言うまでもないでしょう。
サイバーセキュリティ人材の確保は容易ではありません。このため、金融未経験の人材にも門戸が開かれている場合がほとんどです。
安全で透明性の高い取引を実現するブロックチェーンも金融業界に革命をもたらしています。仮想通貨や分散型金融(DeFi)プラットフォーム、スマートコントラクトなどの経験者は需要が高いです。
フィンテックを目指す方は業界動向や競合のサービスを意識し、より速く、より安全で、よりコスト効率のよい金融取引を実現するにはどうすればいいかを研究するといいでしょう。
多彩なフィンテックのキャリアパス
フィンテック業界では最先端の技術力や業界知識、コラボレーション能力など、様々なスキルが求められています。
まだ新しい領域のため、キャリアパスは一つではありません。今までの経験を活かしつつ、需要の高いスキルを意識することで道が開けてくるはずです。
Morgan McKinleyにはフィンテック案件を専門に扱うチームがいます。採用・転職をお考えの方はお気軽にご相談ください。
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