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危機の時こそ企業文化を大切に

危機の時こそ企業文化を大切に
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最近インドの会社である若い従業員が亡くなり、その背景に過重労働や過度なプレッシャーがあったという訴えが波紋を呼んでいます。日本でも悲しい過労死事件はなかなかなくなりませんが、この出来事を受けて世界でも労働環境と従業員の幸福やメンタルヘルスに関する議論が巻き起こっています。

規制当局や政策立案者も監督を強化し、業界基準の見直しや、今後同様の悲劇を防ぐための新しい規制の検討に動き始めました。そして人々は企業の労働条件や倫理基準に疑いの目を向け、そもそも企業文化とは何なのか?と問いかけています。

この事件の根本原因を分析することは、なぜこのような悲劇が起きてしまったのかを理解するために重要です。過重労働や有害な職場環境があったかどうかだけでなく、そのような状況を許容する文化を生み出したものは何だったのか、という点も追及すべきです。不十分なサポートシステムやアカウンタビリティの欠如、短期的な利益重視の姿勢が遠因となっていた可能性があります。

デロイトによると、経営者の94%、求職者の88%が企業文化が成長の鍵であると考えています。

危機や不況に直面すると企業は生き残ることに気を取られすぎて、会社文化に投資することの大切さを見失ってしまうことがあります。突然の変化、山積みになる仕事、リモートワークのように今まで経験したことのない勤務環境など目の前の対応に追われ、長期的な見通しを奪ってしまうのです。

戦略の急な変更や優先順位の調整が必要になることもありますが、時間をかけて育んできた企業文化を疎かにすれば離職者が増えたり、従業員の生産性が低下したりします。優秀な人材も寄り付かなくなります。こうなると会社の危機は更に深まるでしょう。

転職時に企業文化を重視する人は増えています。「自分に合うかどうか」がオファーを受けるかどうかを考える際の重要なポイントになっているのです。

優秀な人材を惹きつけ、定着させるためには魅力的で、人をインスパイアするような企業文化が欠かせません。


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企業文化とは何か?

企業文化については様々な定義がありますが、ごくシンプルに言えば企業文化とは自社における行動を導く価値観や信念、態度であるということができるでしょう。

「この会社はどんな会社なのか?」という具体的なビジョンは、働きやすい環境を作るための土台となります。また、顧客に対するアピールにもなります。

企業文化には四つの要素があります。

  1. 価値観:価値観は企業文化の核となるものです。社員が仕事をする上で、何を重視して、どのように仕事を進めればいいのかという指針になります。
  2. 従業員:価値観を受け入れ、文化を体現してくれる従業員がいなければ文化は存在し得ません。また文化は全ての従業員が参加するものなので、新たな人材を採用する際の重要事項となります。
  3. 環境:物理的な環境(働く場所)は文化形成に大きな役割を果たします。リモートワークの普及により「場」の捉え方もシフトしていますが、自宅など、従業員が働く場所に配慮することは依然として企業の重要な責任です。
  4. 行動:会社の価値観は行動やアクションとなって現れます。取引先、顧客、従業員、そして社会全体との関係において、企業の価値観が反映されていなければいけません。

企業文化は従業員ウェルビーイングだけでなく、会社の業績にも大きな影響を与えることが示されています。強固でポジティブな企業文化の方がよい結果をもたらすことは言うまでもないでしょう。職場文化のマネジメントはもはやビジネスの必須機能であるといえます。

危機の時に企業文化を守り抜く方法

では、企業文化を守るためには具体的にどうすれば良いのでしょうか?

実は文化を守るのはほんのちょっとした行動や心がけです。お金やリソースをかける必要はありません。一方、企業文化をお金で買うことはできないので、日々の積み重ねを怠ると取り返しがつかなくなります。

  1. 社員の声を聞く:従業員が何を感じているのか、何を必要としているのかをわかったつもりにならないこと。社員の意見を促し、その声に真剣に耳を傾けましょう。社員の関心事項を大切に思っていることが伝わると、リーダーや会社に対する信頼が深まります。これはパフォーマンスにも好影響を与えます。
  2. 常に正直でいること:透明性と言い換えてもいいですが、常に正直でいることが大切です。状況が不利なこそ、社員や部下に何が起きているのかをきちんと伝える必要があります。情報を共有することで「私たちは仲間だ」という意識が芽生えます。
  3. 心理的安全性:心理的安全性とは罰や恥を恐れず安心して自分の意見を言える状態のことです。このような環境が確保されていると社員は積極的にアイデアを出したり、懸念事項やミスを指摘することができます。
  4. 今できることに全力を尽くす:不利な状況を、自分がコントロールできない外的要因のせいにすることは簡単です。ですがそれよりも自分にできることに集中しましょう。チームの士気や雰囲気を維持すること、各部署や社員が行うべきタスクの指示など。そうすることで従業員の不安を大きく和らげることができます。
  5. 創造性を発揮する:危機に瀕した時ほど、なりふり構わず何かを変えようとしがちです。ですが企業文化の軸がぶれるような変更は軽率です。価値観を貫きつつ、事態を打開できるクリエイティブな解決策を考えるべきです。
  6. 社員をサポートする:従業員のウェルビーイングへの配慮はどんな時でも大切ですが、会社の状況が厳しい時ほど社員は不安になっているので、特に重要です。社員に寄り添うことで、信頼感が組織全体に浸透します。
  7. 定期的なコミュニケーション:そして企業文化の維持において何よりも重要なのが社員との定期的なコミュニケーションです。対面のコミュニケーションだけでなく、テレビ会議やイントラネットの動画投稿を活用しましょう。長文のメールよりも、生身の人間が情報を伝える方が気持ちが伝わります。

改めてリストアップするまでもない「当たり前のこと」ばかりですが、状況が厳しい時ほど常識を無視して短絡的な決定をしてしまうのが人間の常です。「当たり前のこと」ができているか、この機に再点検してみてはいかがでしょうか。

よい企業文化が根付いている組織の4つの共通点と、企業文化を浸透させる方法

理想とする企業文化のあり方はそれぞれでしょう。ですが前向きな環境を確立している企業にはいくつかの共通点があります。

  1. トップの態度・行動:経営陣が会社の価値観や期待値を明確に打ち出し、自らそれを実践している
  2. アカウンタビリティ:役職や部署を問わず、全ての従業員が会社の価値観と期待値を知り、責任をもってそれを全うしている
  3. イノベーション:オープンな議論を促し、様々な立場からの意見を検討して意思決定が行われる。インクルーシブな文化があるとイノベーションの原動力になります
  4. インセンティブ:全社員に、価値観や期待値を反映した報酬制度(金銭的なものに限らない)が用意されている

では、良い文化を育むためには具体的にどうすればよいのでしょうか?以下、6つの簡単なステップをご紹介します。

  1. 作業プロセスの確立:共通のやり方を確立することで誰から見ても作業内容をわかりやすくし、チームワークを容易にします。
  2. 利益ではなく人にフォーカスする:企業は営利組織かもしれませんが、企業文化は人のためのものであるべきです。リーダーは企業文化にコミットし、身をもってその価値観を示しましょう。
  3. 今ある文化を発展させる:お仕着せの新しい文化を強制する必要はありません。今あるよいものを見極め、大切に育てていけばいいのです。
  4. 文化を発信する:コアとなる価値観を具体的に示すガイドラインなどを作成して、社員にどのような行動を期待するのかを明確に示しましょう。
  5. 他者を助ける人を報いる:チームワークや助け合いが単なる標語ではなく、行動として実現される文化を育むことができます。
  6. 社員同士のつながりを育む:同僚同士のつながりや連帯感は従業員の満足度を高め、会社に対するエンゲージメントを向上させます。

独力ではどうしてもうまくいかない場合は、第三者の助けを借りてもいいでしょう。企業の文化の定義や目標設定、エンゲージメント戦略、そのための変革やステークホルダーコミュニケーションをサポートする企業はたくさんあります。

ポジティブな文化の醸成は今や重要なビジネスプロセスの一つです。健全な文化があればチーム内の革新が促進されるだけでなく、不正や非倫理的な慣習を認めない価値観が根付きます。このような土壌があってこそ優秀な人材を惹きつけ、定着させることも可能になるのではないでしょうか。